グラノーラ夜盗虫

劇場版 優しいスピッツ a secret session in Obihiroのグラノーラ夜盗虫のレビュー・感想・評価

4.0
スピッツのささやかなライブを映画館で楽しめる良作。
これまで繰り返し聞いてきたスピッツだけど、舞台になる旧双葉幼稚園園舎という空間を媒介することで、スピッツの綿密な音の作り込みにはじめて気付かされた。
スピッツの歌詞においては、いつも小さくて取るに足らない存在が主人公だ。その証拠に、植物、花、昆虫、そして社会の端っこにいるような主人公が歌詞に散りばめられている。それらの存在が直面するままならない社会を提示しながらも、それらの生がふと煌めく恋といった瞬間や、それを包み込む大地や海の美しさを切り取っている。

スピッツは、私が生きるのが大変だとずっと感じていた小中学生のときに貪るように聞いていたが、彼らがどんなに大衆人気を得ても、変わらずささやかな人生を送る個人の視点で、ひっそりと隣で歌ってくれているような、このやさしいバンドグループが引き続き大好きだと感じた。

ただ、ライブ後の撮影後記的な映像は監督の自己顕示欲があけすけすぎで興醒めした。撮影のタネあかしを饒舌に行い、スピッツに作品を褒めさせるさまは、音楽の余韻を興醒めさせるもので、なぜこれを誰も止めなかったのだろうと不思議に思った。この映画の主人公はスピッツであって、映画制作者側ではないのに・・