Jun潤

うまれるのJun潤のレビュー・感想・評価

うまれる(2021年製作の映画)
4.0
2023.07.01

予告を見て気になった作品。
衝撃的なポスタービジュアルは恐ろしいのに不思議と惹き込まれてしまいますね。

ある日突然、女手ひとつで育ててきた娘・裕美を喪った良子。
似た境遇の人たちとのグループセラピーに参加しても、いじめによって殺されたから復讐してやりたいという良子の本音は理解されないどころか、心の傷口に塩を塗るような言動をされ、良子は心身ともに憔悴しきっていた。
しかし、裕美のクラスメイトが良子の営む理髪店に訪れ、ふとこぼした一言により状況は一変。
いじめの加害者とその母親たち、学校を巻き込んだ惨劇へと向かっていくー。

おいおいおいおい30分のボリュームじゃねえよ。
というか今作なんでR15+なんですかね。
むしろ義務教育中の全児童に観せて、いじめはどうして起きるのかとか誰が悪いのかとかではなく、犯した罪に対してこんな罰が待っているんだということを、シンプルかつストレートに教えてくれると思いました。

ショートムービーだからこそ、それぞれの家庭が抱える問題だとか、学校側の対処の問題だとか、娘を守れなかった母親の後悔だとか、復讐の是非について考える余地を与えず、ただただいじめという犯罪に対する罰の結末を観せつけてきました。

今作の登場人物たちは、終始悪人しかいなかったんだと思います。
いじめの加害者児童はもちろん、娘の言うことを妄信し、事実が明らかになっても自分のことを棚に上げて良子を糾弾する母親たちも、誠意ある対応をしなかった学校側も、人の弱みに漬け込む怪しい宗教も、そして娘に寄り添うことができなかった良子自身も。
唯一の被害者は裕美だけ、死人に口なしとはよく言ったもので、遺された人たち全員に罪があり、その罪に対する罰が下されたんだと思います。

作中では何がうまれたのか、そこまでは僕の想像も及びませんでした。
しかし娘の喪失に対する悲しみの絶叫と、裕美を産んだ時にいきんだ喜びの絶叫をオーバーラップさせる演出に対しては、生きることや新たな命を産んで育てることに対して、考えざるを得ません。
Jun潤

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