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四月になれば彼女はのladybirdのレビュー・感想・評価

四月になれば彼女は(2024年製作の映画)
5.0
【長くなります】
愛することをあきらめなかった人たちを描いたお話だと感じました
それは自分の中にある愛もあれば、相手のなかにある愛だったり、登場する人それぞれにいろんな愛があって、守ろうともがいてる
軸となる3人の脇を固める方々も、それぞれに複雑な愛を抱えているように見え、この人は・・・と想像力を掻き立てられました
きっと若い世代へ向けた映画だと思うのですが、齢50に近い私にも響くとても素敵な映画・・むしろ人生を長く生きた人のほうが重なる想いが多いかもしれません
恋愛映画、の一言で語るには惜しい、深いテーマがあるように思いました

山田智和監督の映像が好きで試写会に応募し、川村さんの作品には触れたことがなかったのですが、見て見ぬふりをして生きてくこともできるけど、ちゃんと向き合ったほうが豊かになるよね、というとこを突いてくるお話だなと思うと同時に、山田監督の綺麗で優しくて湿度のある温かい映像と視点で描いたのはベストマッチだったなと感じました
ただ綺麗なだけじゃなく、情感が伝わる映像
バチっと見せてしまうのではなく、観る方にゆだねる余白を残してくれる映像が、よりストーリーを引き立たせていた
山田智和監督、さすが!

俳優部については、ほんと素晴らしい!の一言に尽きます
メインのお三方はもちろん、大河が決まった中野太賀さんの表情はもう・・なんとも憂いと毒と慈しみを感じる表情でぐっときました
佐藤健さんは告白シーンでののどぼとけの動きがもう緊張したときのそれで、純粋な学生さんを見事に表現していましたし、森七菜さんも藤代くんと出逢ってからどんどん表情豊かになっていく様や、ありがとうを伝えるときに振り返ったときの笑顔!!!・・もう号泣でした
竹野内豊さんは怖いくらい迫力があったし、ともさかさんの無償の愛ってこれやろ!っていう感じの包み込むような笑顔も忘れられない
ペンタックスの中島歩さんの大らかさや、河合優実さんのキツイ言葉の中に感じてしまう優しさとか、高田聖子さんの強さも印象的です
どの登場人物もバックグラウンドが気になってくる名演でした

森七菜さん演じる春の訪れる、ウユニ、プラハ、アイスランド
どの景色も美しく物語を彩っていましたが、ティーチインの際川村さんのおっしゃっていたアイスランドのブラックサンドビーチのコントラストは本当に圧倒される映像でした
すこしネタバレになりますが、波の白と砂の黒が結婚式(生)とお葬式(死)のメタファーともとれるようになってるとおっしゃっていました

始まった時点で終わりに向かっている
生まれたときから死に向かっていく
愛することも似ている
愛することを描こうとしたとき、死生観にも通づるところがあると感じたという山田監督の言葉に、終わりがあるからこそ人は惹かれるとおっしゃった川村さん、とても頼もしく感じました

死んでもまた生まれる何かがあると、失っても得るなにかがあると
一瞬一瞬小さく生まれては死んでを繰り返す毎日を大切に生きたいなと思いました
ともさかさんが劇中で言う、この時代みんなどこかしら病んでるのよ、というセリフが共通認識になって、みんなが互いを少しでも思いあう世の中になれたら・・

原作とは違う終わり方になっているそうなのですが、エンディングからエンドロールに流れる藤井風さんの「満ちてゆく」の歌詞もとても心に響きました
やわらかいしなやかな歌声と「手をはなす 軽くなる 満ちてゆく」という歌詞にストーリーが重なり号泣でした
こちらのMVも山田智和監督が撮影されているとのことで楽しみです

試写終わりに監督とすこしお話をさせていただいたなかで、公開のタイミングについて、製作開始から4年経ってしまったけどむしろ今のほうがフィットするのかもしれないですね、とおっしゃっていました
観る方それぞれにリンクする想いがあるように思います
誰にも感情移入できない、それもあると思います
でも、観ればなにか感じる映画だと思います
手元にあるムビチケを使って、今度は大切な人と一緒に観てみようとおもっています

最後になりますが、Filmarksスタッフの方、東宝宣伝部の方、遅くまで心地よく映画を試写会を楽しませていただいてありがとうございました
ゴジラ会議室に入れてとてもうれしかったです!

【追記】
川村さんは藤代を、女性が思うダメなところを寄せ集めたようなキャラクターで、モデルは佐藤健さんって言ってたのだけど、藤代と出逢うことで春も弥生も明るくなってるように思うので佐藤健さんはきっといいひとw
藤代くんも、サボっただけでやるときにはできる子、傷ついても取りに行ける子ww
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