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四月になれば彼女はのrieのネタバレレビュー・内容・結末

四月になれば彼女は(2024年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

試写会とゴジラルームでのアフタートークをありがとうございました。

大好きな藤井風さんの曲が主題歌になっていることからこの映画を知り、予告編を見たら佐藤健さんの見たことないほど崩れた泣き顔に目を奪われ、試写会に申し込みたくてFilmarksに登録したので、他の方のように普段からすごい熱量で映画を見てるわけでも、事前に原作を読むなどのインプットがあるわけでもない状態で観ました。

映画の空気感は澄んでいて、ゆっくり流れていき、削ぎ落とされた美学を感じました。
過度に説明的ではなく、スポット的に対比や比喩、第三者から藤代に向けられる言葉が散りばめられています。
なんとなくヨーロッパの映画のような、アートや抽象性、映像美に溢れる作品です。

アフタートークでの雰囲気から、山田さんの空気感にも似ている気がしたので、まさに「らしさ」が出た作品なのではないでしょうか。

失踪以外の弥生の言動にもつかみどころのない不思議さがあるので、ミステリー的要素もあるのかと思いながら見進んだぐらいなので、アフタートークで答え合わせができた部分もありました。

ただ、お互いの病み(闇)を埋め合うように、はじめは情熱をもって、お互い感情から寄り添ってわかりやすく愛し合う形で始まった2人だったからこその失踪なのだと汲みとることができましたし、さらに付き合う前の
「楽しい時にその気持ちが消えることを考えて悲しくなる」
という弥生のセリフからも、弥生がとてもネガティブな思考の持ち主で、そのために、2人でいるのに1人のときより孤独に感じてしまい失踪したのだなと伝わりました。

そんな不安定で悲観的になりがちな弥生というキャラクター性もありますが、大事な人や瞬間は逃しちゃいけない、がむしゃらになる必要がある、というシンプルなメッセージも感じました。

「今の時代みんなちょっと病んでる」というセリフに象徴されるように、登場人物のほとんどが孤独を抱えてどこかしら病んでいます。
特に春パパのホラーな表情と「ずっと一緒にいないとだめなんだ」発言で、依存性の強い極端な愛の形が描写されていたのが印象的で、最後の方の弥生の表情も迫力がありました。

短期間で海外各所を巡り倒れた「春」は、その名前から既にパッと咲いて儚く散っていく桜のような姿を連想させますし、桜の映像ともリンクして終始美しく描写されています。

2人で叶えようとしていた世界中の朝陽を見る旅は、2人の幸せのスタートや自由を象徴しているようで、タイトルの4月ともリンクします。

川村さんがおっしゃっていた、黒と白の砂浜や衣装が死生観をあらわすように、潮の満ち引き自体でも、愛情や命の満ち引きをあらわしているのではないでしょうか。

いまは多様性も認める時代なので、結婚という決められた形にとらわれなくてもいいですし、むしろ中身(目に見えない愛が確実にそこにあること)が大事、というメッセージにも、今っぽさと普遍性があります。

タイトルが、サイモンアンドガーファンクルの同タイトルの曲からきていることも川村さんがおっしゃっていて、確認すると確かに洋題も邦題も同じなので驚きました。
さらに深掘りしてみると、その曲も200年前のキラキラ星の作者のイギリス人の詩がもとになっていたことがわかり、なんだか興味深かったです。

川村さんが桜色のニットなど春っぽい服装で、山田さんが真っ黒だったのも、死生観を表現しようとこっそり示し合わせたものだったのでしょうか。

クリエイターのお2人ならではのユニークな考え方や受け応えに触れ、behind the scene的なお話もうかがえたこともひっくるめて、とても刺激的で楽しい体験でした。
ありがとうございました!

追記!藤井風さんの『満ちてゆく』、声のトーンも何もかもすごく合ってて最高です、、
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