門田睦

四月になれば彼女はの門田睦のレビュー・感想・評価

四月になれば彼女は(2024年製作の映画)
4.4
まず、
パンフにあった「熱くなりきれないというか、必死になりきれない」という佐藤健の言葉。ほんとにそうだと思う。
だけどそれに気づいた今だけでも必死に、この作品を咀嚼したいと思っている。

自分もフジに近い。
だから自分のことを棚に上げて、愛を取り戻せて良かったね!って言えない。

心を重ねることをサボる。それは小さなことの積み重ねで、一つ一つを取り上げたらくだらない事かもしれない。けどそこをサボらないのが大きな愛、掴みどころのない愛を掴めるかどうかなんだと思う。これをフジは出来なかったし、やっていこうとする一歩目が描かれていだと思う。
そしてこの点において自分はサボっている側だと思う。だから共感。
幸せなことがあった途端に、その終わりを見てしまう弥生の癖にも共感。

愛を終わらせない方法は、手に入れないこと。ってのが印象的すぎてそれが正解感あるけど、自分はその解釈ではなかった。手に入れないってのは終わりを見てしまう弥生の癖故に出てきた答えで、むしろ手に入れようと緩和医療のスタッフになったから、それを乗り越えようとしている途中なんだと思う。
フジも同僚?に愛を終わらせない方法を聞いて、そんなの分かったら… というくだりもあったから、それぞれに方法があってもなくても良いんだという提示だと思う。

愛すること、心を重ね合わせることをサボらない。諦めない。確かに恋から愛が生まれていた。けど、その愛を紡げるか、紡いだ気になっていないか、紡ぎ直そうと思えるか。
そーゆーことを僕はこの映画から受け取ることが出来たし、そんなこと全然できてない自分にもへこんだ。

ハルが最後、ポートレートを撮りはじめていたのもすき。フジへの想いに片をつけて、新たなことをはじめる、人の奥を見つめることに向き合い始めていた。意外とここが個人的1番泣きポイント。
脇をかためる人々の言葉一つ一つが、強かったのも印象的。シナリオブック欲しい。

正直、割と排他的な構成だったから全体への感情移入は無かった。けど、節々のシーンで映画と感情が重なると、その時だけ強い繋がりを覚えた。不思議な感覚。
映像はもちろん綺麗。もちろん綺麗と言えるのうれしい。演技ももちろん良い。良すぎる。脇役の方々も含め、演技がいやらしくないアクセントを加えてくれてる。

見終わった後、へこんだし、見てる途中、結婚なんて無理だとか一瞬思った。
けど最後には、えもいわれぬ一本の道が見えた気がした。その道がちゃんと見えるまでこの作品を見たいし考えたい。
門田睦

門田睦