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四月になれば彼女はの8637のレビュー・感想・評価

四月になれば彼女は(2024年製作の映画)
3.8
いや、誰しもこれくらい引きずるでしょ。詩的で美しい原作を、邦画史上最高峰の映像美で魅せる激エモ恋愛映画、の筈が、ストーリーが予想以上に重く最後には虚しい気持ちに。もう高校生の恋愛しか信じられないよ...

今、"映像美"という観点で言えば映画よりもMVが断然アツい。その中でも重鎮と言える山田智和監督の初長編映画ということで、ファンの自分には外せなかった。
撮影監督・今村圭佑との息の合ったショットの構成は言うまでもない。エモーショナルに仕上がってはいるが色調は淡く、しかしボケ感と密度が非常に高度。
小林武史が音楽やってる割に妙に映像とズレてる...とは思ったが。

川村元気作品の常連、佐藤健。スター性のある彼の"らしさ"は残りつつも、か弱い学生らしさがあったりする。個人の感想として、長澤まさみはわざと歳を取っているような映し方をした気がする。それによって物語の一般性は増した。
森七菜の演技は自然体すぎて、もはや他の演者のペースを崩させる。マジでいつまでも神の領域に達してる俳優。

ずっと思ってるけど、赤の他人同士の恋愛ほど興味のないことなんてない。なんだけど、まだ僕は17だと言うのに、どこか自分の恋愛観と重ねてしまったりもする。宣伝としての売りはエモさだけど、本当の年齢層は違うんだろうなと思った。
映像美も兼ね合わせて、いかにもテレンス・マリック的な女ったらしさ、説教がましさ、恋愛の美化を感じた。愛のせいで複雑な邦画って最近なかったよ。
まぁ確かに、ハルを森七菜に演じさせてしまったからあんなに感動モノに美化されただけで、本当は未練がましいストーカー気質の女だって考察も納得できる。

過去には違う誰かを愛していた人を愛するって、よく考えたら本当に怖いこと。恋愛感情の答えは自分次第でいいが、愛の答えはその時々の二人で合わせなければならないもの。それでも「誰かに愛されることを諦めきれない」のが人である。恋を続けてしまう、多分一生。
最後に残るモヤモヤは、結局愛に溺れる人間の性を全て請け負ってくれているのかもしれない。
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