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チャタレイ夫人の恋人のThePassengerのレビュー・感想・評価

チャタレイ夫人の恋人(1995年製作の映画)
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つい最近、D・H・ロレンスの書いた原作を読んで感銘を受けたこともあり、自然と映画の方にも興味がわいた。心情描写を主とするあの小説の世界観をフィルム上で表現するのはかなりハードルが高く、どうせ男女の肉体的な交わりだけをクローズアップした官能ドラマに決まっている、と頭の片隅では思いつつも、主人公のコニーや森番メラーズがどう演じられているのかが気になった

いくつかの映画版のなかから、今回はケン・ラッセル演出によるヴァージョンを選択。借りたあとに知ったが、BBC製作のTV用ミニシリーズを再編集して日本のみで劇場公開されたものらしい

小説の映像化には、出来るだけ原作を忠実に再現する、あるいは、基本コンセプトを踏襲しながらも大胆に翻案・脚色を加える、このいずれかの方法を取るケースが多いが、本作は典型的な前者。映画の原題を見ると、小説のタイトルに付けられていた「恋人」を意味する言葉が除かれ、単に「チャタレイ夫人」となっていたので、何か新しい解釈が含まれるのかとも思われたが、おおまかな流れに特別変わりはなかった

主要キャストは、原作のイメージに近く申し分ない。特にコニー役に関しては、身長が若干高い感じはするものの(小説では骨太だが背自体はあまり高くないと記述)その気品溢れる美しさは私が想像していた姿とまさにピッタリ。また、メラーズを演じたショーン・ビーンも雰囲気がよくフィットしていた。元来がTV向けだからだろうが、性愛描写は考えていたよりも控えめだった

ラストがありきたりなメロドラマに脚色されてしまったのは残念。全体の奥行や深みもやはり小説には遠く及ばず、あくまでも原作に触れたうえでの補完的な意味合いで映画を鑑賞するのが望ましそう。「チャタレイ夫人の恋人」と同様に身分違いの恋愛を扱った作品ですぐさま浮かぶのがドライサー作「アメリカの悲劇」だが、ふたつを上手くミックスして日本を舞台に翻案する企画なんてのも意外に面白いかもしれない

(2023-61)
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