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世界のはしっこ、ちいさな教室のTSのレビュー・感想・評価

3.5
【学校で授業をするという幸福】75点
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監督:エミリー・テロン
製作国:フランス
ジャンル:ドキュメンタリー
収録時間:82分
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 2023年劇場鑑賞29本目。
 世界の学校シリーズとも言うべきか。あの『世界の果ての通学路』の製作チームが手がけるドキュメンタリー映画です。ホームページによると、世界の約1億2100万人の子どもたちが、まともに学校に行って授業を受けられていない模様。オンライン授業などが普通となってくる中、そもそもその段階にすら入れていない子どもたちがどのようにして勉強をしていくのか。先生1人確保するだけでも大変。本ドキュメンタリーはその中でもアフリカのブルキナファソ、アジアのバングラデシュ、そしてシベリアで活躍するとある先生達に焦点をあてたドキュメンタリーです。環境は全く違えど同業者であるが故に、色々と考えさせられました。

 ブルキナファソのとある村の学校に赴任したサンドリーヌ、ほとんどが水没してしまい、ボートで島を行き来しないといけない環境のバングラデシュのとある村で、先生として赴任したタスリマ、過酷な環境のシベリアで教鞭をとるスヴェトラーナ。この三人がいる環境は全て大きく違えど、やはり子どもに対する熱い情熱には共通点があります。これからの未来を支えていく子ども達にはやはり教育が不可欠です。教育と一言でいってもいろんな内容がありますが、まずやはり読み書きそろばんから入ってくるでしょう。サンドリーヌが赴任したブルキナファソの村ではフランス語を教えていきますが、子ども達はフランス語をほとんど全く知らない状態。というか、サンドリーヌに与えられた環境が今までと違いすぎて唖然とさせられます。「井戸が壊れているから水が出ない。だから毎回川から水を取ってきて」と言われたら僕らはどうなっちゃうでしょうか。こうして、電波もほとんど届かない場所でサンドリーヌの教師生活が始まるのです。

 どのパートも光る部分がありますが、やはり僕はブルキナファソのサンドリーヌのパートが最も印象的でした。子どもたちは純粋そのものであり、授業に釘付け。誰1人寝る者はいず、積極的に挙手をして発言しています。というと、日本の学校もこうであってほしいと思ってしまいますが、日本の学校環境とは全く別物なので比較してはならないでしょう。そもそも人間とは徐々にありがたみを忘れてくる生き物であるはずなので、日本の教育現場はそうなってきていると言わざるを得ません。なので、子どもたちがどうのとかいうよりかは、授業をやるこちら側の工夫が必要になってくるのですね。

 改めて初等教育の重要さがわかるとともに、先生と子どもともどもかなり苦労している世界的事情を知れることができる貴重なドキュメンタリーです。『世界の果ての通学路』でも、学校に行くだけでこんなに苦労しないといけないのか、と驚かされましたが、今作でもさまざまな驚きがありました。特に教育を志す人には一度みてほしい作品と感じました。
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