じゅ

世界のはしっこ、ちいさな教室のじゅのネタバレレビュー・内容・結末

3.8

このレビューはネタバレを含みます

土の大地に雪の大地に水没した村。地理とか国際情勢か何かにでも詳しくなけりゃ名前すら知らなそう(俺はシベリア以外知らなかった)な、電気だの通信だの水だののインフラも通っていないような場所で、子どもたちに初等教育を施す先生たち。単純に付いて来れない子、興味を示さない子、その地の風習で教育を差し置き児童結婚に差し出されそうになる子(少女)。各地で様々な問題に突き当たりながら、それでも教育者たちは彼らの将来の自立のために学校を続ける。


なんか、がんばれ!ってかんじ。
やればできるって感じる。本作と『GOGO(ゴゴ) 94歳の小学生』とQuizKnockの1時間自由研究と10日で国家資格はなんか観た後やる気出る。

イブくんだったか。フランス語圏から赴任した先生の言葉がぎり通じる、5つの言語が飛び交うたぶんアフリカの地域の少年。「i(イ)」の字が書けなくて、「僕はイブです」っていう自己紹介を話すのも苦労して、みんなから大きく遅れを取って木の下で独りで昼食を食べてた少年。1年生の修了式(?)で6位で呼ばれたところは俺シアターで一人沸いてたぞ。
東南アジアっぽいとこの、「女は教育より結婚!」みたいな価値観が未だ根付く地域の少女はヤスミンといったっけか?中学2年生になったって。超がんばってるな。あのおかんに学費がもうねえからっつって辞めさせられないかだけ心配だ。てかあの船の学校では統計とかちょっと勉強するのな。俺は小学校でやった記憶ない。すごい。算術平均は不偏推定量だみたいな話は大学で習ったような。


ヤスミン(だっけ?)に関しては学校辞めさせられる懸念以外にもあるんだよな。何も知らねえやつの想像でしかないんだけど、高校まで出たとして、その後就職できるかってところ。あの先生は人道支援団体の所属らしかったけど、少女の方はそうなるとは限らなくて地元で職を探すことになるかもしれない。そうなった場合、まるで女は男の所有物だみたいな価値観が未だ根付いてるあの地で就職差別にブチ当たらないわけがない気がするのよな。先生が人道支援団体に入ったのは、被差別の対象にならずむしろ希少価値になりうるからめちゃめちゃ幸運だったかもしれん。でも、教え子の方は超不利な椅子の取り合いに駆り出される気がしてならん。万が一職が得られなかったら尚更おかんに文句言われまくるよな。政府よ、世界よ、どうか彼女に明るい未来を。

そういうわけで、最後の締めの言葉で言われてた、教育の先に必ず自由があるみたいな文言には完全に同意しきれないところがある。そりゃあそう思いたいけど、俺は確実に彼らよりかは恵まれた日本の環境で高等教育まで受けた先の人生を何人分か見てきてて、自由かっていうとそうは見えないような人が結構いる。まあ自由か否かってどう評価するか知らんし、程度の問題でもあるとは思う。例えば学のない人間から搾り取ろうとするクソ共の魔の手から逃れ得るみたいな点ではある程度自由になれるのかもしれんけど、いかんせん自らの手で高度な自由を掴み取ろうとするには世界は不可制御な外力が強すぎる。
本作のその後として、町の中学校に進んだとか、寄宿学校に進んだとか、より高度な教育を受けるためにほぼ閉ざされたような僻地から外界に飛び出していった例が語られていた。彼らの成長を願うけど、それと同じくらい、世界の悪意に呑み込まれなきゃいいと強く願う。


まあどうあれ、教育を通してあの子らの世界は何らかの形で広がってくはず。広がった先が綺麗なものばかりとは限らんけど、がんばって良いかんじの場所を見つけて収まってくれればいいと思う。
じゅ

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