ノラネコの呑んで観るシネマ

裸足になってのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

裸足になって(2022年製作の映画)
4.4
アルジェリアでバレリーナをしているフーリアは、大きなチャンスのかかったステージの直前、男に襲われて重傷を負い声を失う。
彼女を絶望から救ったのは、リハビリの過程で出会った聾の女性たち。
彼女らにダンスを教えることで、フーリアは立ち直ってゆく。
これは単に一人の女性の復活劇ではなくて、フーリアは残酷な暴力に翻弄されてきたアルジェリアの女性たちを象徴する存在。
登場人物のほぼ全員が、10年に及ぶアルジェリア内戦とその後の騒乱で大切な何かを失っていて、劇中でもこれでもかというくらい、理不尽な災難が降りかかる。
抑圧された女性たちにとって、ダンスとは内面の解放に他ならない。
鋭い目力でフーリアを演じるリナ・クードリが素晴らしく、冒頭から肉体的にもキレキレだ。
最終的に彼女が作った情念のダンスは、クライマックスで静かな怒りをたたえながら第四の壁を超えてくるのだが、この大胆な演出には思わず唸らされた。
北アフリカの現代史をバックボーンに持つ、骨太の力作だ。