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裸足になってのharukapiのレビュー・感想・評価

裸足になって(2022年製作の映画)
4.5
すごく好きな映画だった。バレエダンサーのフーリアが逆恨み的な暴力によって大怪我してトラウマから声も失ってしまう。死んだも同然として打ちひしがれるなか、リハビリを続けて、リハビリ中に出会ったろう者の女性たち(正確には内戦の時に虐げられたり傷つけられたりして話せなくなってしまった女性たちがほとんど)との出会いや交流のなかで、歩いて走ってまた踊れるようになる。再起の物語。
内戦の混乱がまだ社会に残像していて、犯罪を犯すことに抵抗がないような恩赦を受けた自己都合の糞野郎が野放しになっていることや警察の怠惰が目につく。し、フーリアの親友がここには何も無い(空気さえもお金を払わないといけなくなるのでは?と笑う)といって、シンドバッドのおとぎ話を夢見ながら理想を求めて対岸のスペインへの亡命を繰り返そうとする姿。無茶な試みだと思えるのに、ボートに乗って海を越えようとする移民たちが大勢いる事実も描く。イスラム教の国と言えども女性たちはブルカをかぶっていないし一見生き生きしているように見えるのに、女性が運転しただけで夫が殺される事実があったりと、支配的で理不尽な社会があるんだなぁ。
女性たちが遠足に行く陽だまり溢れるシーンや屋上でのダンスの練習、皆でご飯を作るシーン、ラストのダンスシーン。すごく色どりと笑い声に溢れた美しい情景が多くて胸に残った。手話とダンスという表現を使って、自分の中にある情熱や悲しみや祈りみたいなものを表現しようとするフーリアの姿とダンス、表情がとても美しかった。
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