ツクヨミ

裸足になってのツクヨミのレビュー・感想・評価

裸足になって(2022年製作の映画)
2.7
何もしてくれない社会.理不尽な現実が生むフラストレーションをダンスに昇華させる。
予告編にて"ガガーリン"で印象的だったリナ・クードリが出てるなーみたいな軽さで本作を見に行ってみた。
まずオープニング、夕暮れか朝焼けか美しい屋上でバレエの練習をするシークエンスからスタート。ほぼ自然光で撮ったように煌びやかな光がうまい具合に自由なカメラワークでバレエを見せるのがまあまあ良い。
まあ前半はリナクードリ扮する主人公がバレエを頑張りつつホテル清掃のバイトをしている生活描写が主なドラマだ、そしてそこにアルジェリアという独自の道を歩んだ国の危うさというか治安の悪さが垣間見える。母親のため車を買う夢がありながら、その資金を裏賭博で得ようとする主人公の姿がちょっと悪くみえてしまう。しかしそれも環境のせいというか治安が悪い国ならではの生活環境を見せつけていく。
そして逆恨みを買った暴漢によって声を失ってしまうという悲劇からの再生の物語…が始まるかと思う。そんな物語なら2022年個人的トレンドだと感じていた"喪失と回復"の物語かと、だが再生しようとしようもなかなか困難な現実がそれを許さないというもどかしさが今作で際立っており簡単に再生の物語とは言えないのがまた良い。ハンディキャップを持った共助グループで再起を図るがなかなかうまくいかない.主人公を襲った暴漢が逮捕されたのにすぐ釈放されるという社会に対してのストレスなどリアルなフラストレーションが積み重なっていくえぐみ。
そんな辛さを主人公はどうするかそれが本作の肝、彼女はできようにもできないことに固執せず自分なりの創作ダンスでフラストレーションを表現していくのが唯一無二だった。個人的にダンス=ミュージカルという考えが優先してしまうため、フラストレーションをダンスに昇華させフラストレーションをフラストレーションのまま踊りとして表現するラストは流石に美しすぎる。アルジェリアという国の現実は全然知らなかったが、暗黒期の現実を見.そんな現実を現実のまま受け止め独自の解放を見せる素晴らしくオリジナリティ溢れるドラマだった。
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