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裸足になってのumisodachiのレビュー・感想・評価

裸足になって(2022年製作の映画)
4.5

アルジェリアでバレエダンサーを目指す女性を襲う悲劇と再生を描く。

『パピチャ』の監督による最新作。主演も同じくリナ・クードリ。

バレエ指導者の母親を持ち、自らもバレエダンサーを目指すフーリアは、ある夜に見知らぬ男に襲われて階段から突き落とされてしまう。脚を負傷しバレエの道を諦めなくなったフーリアだったが、リハビリ施設で出会ったろう者の女性たちのグループと知り合ったことにより、また踊りへの情熱を取り戻していく。

いやあー、強い。リナ・クードリはいつでもめちゃくちゃ強いなあ。

『パピチャ』ほど衝撃的な展開はないものの、アルジェリアにおいて女性たちが置かれている状況が厳しいことに変わりはない。そもそもクラシックバレエ自体が良く思われていない上に、警察は腐敗し切っていて暴行犯を守る始末。かつて人権弁護士として活躍した女性も、いまやすっかり保守的になり怯えた日々を過ごしている。そんな社会で生きているフーリアたち。

どんなに危険な目に遭おうとも、どんなに酷い扱いを受けようとも、本作に出てくる女性たちは希望を捨てない。老いも若きも色々なタイプの女性が登場するが、全員が生き生きとしていてとても美しい。

Beyonceを歌いながらわちゃわちゃと踊り狂うダンサーたちも、ピクニックでキャッキャとはしゃぐろう者たちも、光り輝くように美しくて、女神のようだ。彼女たちの生きるパワーと美しさは何よりも強い抵抗であり、クライマックスの群舞はまさしくそれらの象徴として圧倒的迫力を持って迫ってくる。

最もつらいエピソードとして登場する親友の魅力的なキャラクターも非常に印象的。

何があっても負けない。理不尽を絶対に許さない。リナ・クードリの瞳に宿る怒りと決意は、全ての虐げられている女性たちの希望となるだろう。
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