AKANE

グランツーリスモのAKANEのレビュー・感想・評価

グランツーリスモ(2023年製作の映画)
4.5
えぐい。体感20分でおわった。ただ映画というよりグランツーリスモというゲームのプロモーション動画っていう表現の方が合ってる気がします。無駄や中弛みもなくかっこいい、悪く言えばめちゃめちゃかっこいいけど浅い、良く言えば浅いのに満足感がすごい。このレビューを書くために、どうして浅く感じるのか、なのにどうして満足感がすごいのか、一晩考えました(こんなのはじめて…///)

今作を観終えたあと映画好きの大半が「あれ?こんなもんか」と少し物足りなく感じる気がどうしてもするんです。

でも、わざとそうする必要があったんじゃないかと。今作は主要キャスト以外の人物の心境や背景について、ほぼまったくというほど触れられていません。冒頭からこの物語を進める大事な役であるオーランド・ブルームや、主人公の恋人となるオードリーでさえもです。ただ、そもそも製作陣が描きたかったのは人間ドラマではなく、このゲームで夢を叶えた主人公、その主人公が大好きな『グランツーリスモ』のはず。

"『グランツーリスモ』で運転が上手いというだけで自分の車も持っていないゲーマーが日産とSONYからスカウトされ、プロのレーサーに混ざり大会にでる"それ自体が激やばストーリーなんです。

そんな元ゲーマー主人公が命懸けで乗るレーシングカーのなかでは「集中しろ!集中!集中!」と繰り返し言われるシーンがあります。レースのたびに。何度も何度も。振り返るとそれは観ている私たちにもレースに集中して欲しいんじゃないかと。そのためにここまでのライトなストーリー、キャラ設定にしているのだとしたら、それを「ストーリー浅wwwおもんなwww」と叩くのはナンセンスすぎると、自分の中での結論に至ったんです。

ここまで映画のことを汲み取ろうとしたのは本当に初めてです。「おもんなかった」って一言でレビューするのも自由だし、それで片付けてもよかったかも知れません。でも自分自身ゲームをしていて、e-Sportsを観るのが好きで海外の選手が好きで、それを「たかがゲーム」と一括りに嘲笑われること、それに憤りを感じた経験が少なからず生きていたんだと思います。

ゲームからここまで成功したひとの話をたくさんの人に知ってもらえたら、心無い言葉を発する価値観を持つ人も少しは減るんじゃないでしょうか。そうなるといいな。

あとはやはり、そのレースに集中するなら映画館です。映画館で、IMAXで、轟音で臨場感ある圧倒的な音響と映像美で観るのと、配信落ちして家でみるのとでは「集中!」度合いが段違い。
不安要素としては、必要不可欠なもの以外を断捨離した作品にした分、自宅でドラマをよくみる人間関係、人間ドラマを重視する層からは少し評価が下がるのかも知れないなとシンプルがゆえの欠点も考えました…そうならないと良いな。

ゲーム実写化は本当に今年良作だらけですね。今作を観る上で、現実の世界にゲームが混ざるような演出もとても万人受けすると思いますが、私は実際にサーキットのコース上で6秒差を映すシーンがいちばん好きです。まじでかっこいい。

ゲーム制作会社ポリフォニー・デジタルの設立者で代表の山内 一典さんがこのような世界で絶賛されるゲーム、いやレーシングシュミレーターを制作されたのが誇らしいし、尊敬しかない。そのおかげで東京の思い出横丁とオーランド・ブルームの奇跡のコラボレーションがみれたんだから!www

今作、東京のシーンが本当に多いです。その違和感で少し恥ずかしいぐらい。社内のデスクで画面の端に不二家のぺこちゃんのミルキーとポケモンボール映ったの見逃さなかったワヨ。
あと、今作の主役であるヤンご本人が自身の役のカースタントをしてたの、どう考えてもアツすぎるだろ。みなさんのこの映画のレビューを、色んな意味でたのしみにしています。
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