とむ

グランツーリスモのとむのレビュー・感想・評価

グランツーリスモ(2023年製作の映画)
4.2
監督は「第九地区」「チャッピー」など、自主制作的なテイスト強めでありながら自身がCGクリエイターとしての圧倒的なセンスを持っているが故に大傑作SFを撮るものにおいては右に出る者がいないと名高い(当社比)ニール・ブロムカンプ。
(日本だと、映画は撮ってないけどMIZUNO CABBAGEさんとかが近いのかな)

前作のチャッピー(正確には間にホラーがあったらしい?)からかなり時間が空いたことと、本作の上映までかなり延期が重なったこと等、どうなるんだろうという不安もありつつの鑑賞ではありましたが、
これまでの監督の作風とエンタメ大作としての圧倒的なクオリティが上手く噛み合った傑作だと思いました。


前述した監督の作品ほどCGが完全メインになる作品ではないんだけど、むしろそれがよかった。
特に実際の風景にゲームのUIが浮かび上がる演出や、文字通りゲームのプレイングに"没入"する表現など、一見他の映画でも見られる様な表現でありつつ、CGに強いニール・ブロンカンプならではな作品に仕上がってたと思います。

警察に追われるシーンでゲームの画面まんまになるシーンとか「他の人には見えていない世界」を描いてることもありグッとくるんすよね。
特に今作のストーリー的にも最初は実力があまり肯定されていないという凹み要素もあるし。

個人的には「素人からプロになってある程度の経験を経てぶつかった壁に対して初期衝動を思い出し乗り越える」っていう展開にめちゃくちゃ弱いので、
ラスト付近で映画冒頭であった父とのライン取りのやりとりがリフレインするくだりがツボでした。

CGだけで、意地悪な言い方をすると誤魔化すようなカットばかりなわけではなく、
カーレースにおける"6秒"という数字がどんだけの大きさなのか実感させられるカットもめちゃくちゃよかった。


全体通してシナリオのレベルの高さと、
映画作家であるブロンカンプの表現力の高さがこれ以上ないほど噛み合っている作品だと思いました。
ストレートに面白いウェルメイドで、かつ迫力のあるかなり好きな作品になりました。
監督にはこの調子でどんどん新作を撮って欲しいです。

あと、レースものとしては、フォードVSフェラーリがここ数年で記憶に新しいですが、やっぱりクライマックスはラ・マンなんですね。
とむ

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