TS

グランツーリスモのTSのレビュー・感想・評価

グランツーリスモ(2023年製作の映画)
4.4
【レース映画史に残る傑作】92点
ーーーーーーーーーーーーー
監督:ニール・ブロンカンプ
製作国:アメリカ
ジャンル:アクション
収録時間:135分
ーーーーーーーーーーーーー
 2023年劇場鑑賞37本目。
 これはヤバい。今年の洋画暫定ベストきましたね。ゲームのグランツーリスモを全くやったことがない身ですが、それでも十分手に汗握る大傑作でした。数年前の『フォードvsフェラーリ』にも勝るとも劣らない、レース映画史に名を残す作品と感じました。これはもう最高の劇場環境で観ないと損だと思います。

 グランツーリスモのシムレーサーであるヤンは、プロのレーサーになることに憧れていた。そんな中、SONYと日産が提携をし、シムレーサーの中からプロのレーサーを選抜するというイベントが行われるのだが。。

 日産もSONYも日本発であるため非常に誇らしくなります。改めて、日本の技術が世界最高峰の一角であることが垣間見れます。冒頭、嬉しそうにグランツーリスモの最新作のソフトを開封するヤンの興奮具合には、こちらもつい微笑ましくなってしまいます。ニンテンドーといいSONYといい、世界中に夢を与え続けているのは本当に素晴らしいことだと思います。さて、楽しそうにゲームをプレイしている中、マーケティング責任者のダニーのプレゼンにより、日産がとある企画に乗り出しました。それはなんと、仮想世界で活躍するシムレーサーを、現実世界のレーシングに取り込もうとするもの。事実、ゲームの世界に没頭していたシムレーサーも、まんざらではないようで、夢を掴むためにエントリーしていきます。その中でもヤンは抜きんだ実力を備えていて、巧みな技術で選抜を突破していきます。

 王道のサクセスストーリーという感じでして、実話ながらも脚色は多分にされているでしょう。うまいところで挫折して、それを克服するように師が弟子を慰める。ありきたりといえばそれまでですが、『ロッキー』といい、こういうスポ根系映画に例外はいりません。王道のまま進めてもらい、ど迫力のレースシーンを見せてくれば何の文句もないでしょう。

 事実、今作ではレースシーンの尺がかなりとられていますが、全く飽きることなく釘いるように観れます。数多くのサーキットをめぐり、最終的には『フォードvsフェラーリ』でも注目されたル・マンが決戦の舞台となります。どこまでがCGかはともかく、とてつも無い費用がかかっていることは誰でもわかります。様々な大企業が手を貸してくれた結果、これ程の大作ができたとも言えましょう。
 とにかく、こうやって一つの道をひたすら突き進む人生って素晴らしいですね。たかがレースかもしれませんが、そこには凄まじいドラマがあり、命を賭けても成し遂げたいものがあるということを痛感させられます。

 また、今回のようなシムレーサーから才能ある人物を発掘するやり方は今後増えていくのではと思いました。今回で言うと、シムレーサー達に確かに体力はないけれども、ゲームで鍛えられた瞬発力、判断力はプロのそれとほとんど変わりません。家にいながら仮想空間で様々な体験ができるという現象は、昨今では当たり前のように繰り広げられ、そこで才能が開花するのならば、これ以上にコスパの良いものはないでしょう。今回のプロのレーサーの件で例えても、この人たちは昔から英才教育を受けて、滅茶苦茶お金をかけてきたでしょう。ところが、グランツーリスモをひたすらやり尽くすだけでその感性を鍛えた人が実際にプロ級の運転ができるとなると、皮肉ながら前者と比べて断然にコストが安くつくと言えるでしょう。いわば邪道。その道を極める者が通る道筋をカットしているので、やはり毛嫌いされてしまうでしょう。現に、ヤンは最初から全く歓迎されていません。それもそのはずで、最初からヤンを認めてしまうと、自分たちの今までの努力を全否定してしまうからです。

 と、そのような問題点は確かにあるけれども、天才を育成するという手法が時代とともに変わりつつあるということが何となく仄めかされたような気がします。ただ、個人的に心配なのが、戦争ゲームなどにはまってしまったプロのゲーマー達が、政治などで悪用されるところまで来ないかというところです。流石にそれはないかな、と思えてしまいますが、人間って本当に何をするかわからない。そういうことについても考えさせられた一品でした。

 とにかく凄かった。レイトショーでしかもIMAXレーザーで観た価値は十分にありました。また、中盤に出てくる夜の東京の映し方も素晴らしかったです。ヤンが憧れるのがわかるほど、喧騒的ではあるけれども幻想的な都市ということが認識できました。ところどころ日本へのリスペクト描写があるのも好感度があがってしまいます。
 グランツーリスモファンならば発狂するでしょうし、未プレイの人も十分楽しめる娯楽傑作となっています。是非とも観るならば最高の劇場で。
TS

TS