Masa

グランツーリスモのMasaのネタバレレビュー・内容・結末

グランツーリスモ(2023年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

凄まじい映画だった。

主人公がひたすら強い王道ストーリーかと思いきや、現実に裏打ちされた悲劇が悲劇すぎてヤンを襲うのが見ていて辛い。本当に現実であそこから立ち直ることができたことにひたすら驚く。

再起するヤンと、レーサーとしてのヤンを心から認める父親。この辺のシーンから隣の席でガチ泣きしているヒゲメガネのおっさんが気になって終盤まで集中できなかったが、そんな過酷な鑑賞環境下でも最終局面で8位から1位までごぼう抜きしていくシーンは、こちらも毎秒命を削って突き進んでいるような気持ちになった。

コーチが「俺はお前たちができないことを証明するためにいる」と指導前に言っていたのが、ヤンがライセンスを取るあたりから「今はお前を信じている」と態度が変わったり、序盤でヤンがシミュレーターの練習中に後ろの父親に「ここでカーブを攻めるんだ」と言っていたのを最終局面で実際にやってのけたり、序盤に蒔いた種を変化や繋がりといったように見事に終盤で使っているのも、映画的手法としてうまい。

こういう映画を見て感じるのは、自分もリアルでも誰かを心から応援したい、願わくば応援される側に立ちたいということだ。自分が心から願った高みに挑戦したい。感動して、それで終わりでいいのだろうかと自分に何かを突きつけられる。

エンドロールでは隣に涙も枯れて呆然としているヒゲメガネのおっさんがいた。どこの誰かはわからないが、その瞬間誰かと感動を共有できていたことに満足感を覚えて映画館を後にした。
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