ゲームの世界から現実のレースに挑むということで、大きな挫折を繰り返しながら奮闘していく話を期待していましたが、思っていたものとは違っていました。ゲームと実際の違いは技術的にはあまり語られません。クラッシュするといろんな意味でやり直しが効かないよ、という一点のみで、そこで主人公が内面的に葛藤するというのがメインテーマでした。
最終的にはドライビングシミュレーターが良くできていて、そこで速い人は実際のレースでも「そこそこ」通用しますよ、という身も蓋もない結論で、それをドラマに仕立てるために親子関係や事故なんかの要素を付加していっている印象が強かったです。しかも事故の要因は純粋にエンジニアリングの問題で、主人公になんの責任もありません。
見せ方は万人受けを狙ったもので、極力ゲームやレースのマニアックな話題に触れない作りになっているのも残念です。当たり前のことをわざわざ喋る説明的なセリフとか、どんなカテゴリーに参加しているのかを語らないところとか。ルマンのクラスの違いにまったく触れない違和感といったら。結果、グランツーリスモが好きな人にも、実際のレースが好きな人にもあまり刺さらない映画になってしまっています。
多くのシーンが実写を使って撮影されているそうですが、カメラワークとか演出の結果、いかにもゲームっぽい映像になってしまている印象でした。『フォードVSフェラーリ』くらいのリアルさが欲しかったです。