yassoon

グランツーリスモのyassoonのレビュー・感想・評価

グランツーリスモ(2023年製作の映画)
3.6
レースのシーンは本当に迫力がある。レースゲーム、じゃないシミュレーターから由来したCGも凝っており、何より出てくる車の見せ方が素晴らしい。

しかし、デヴィット・ハーバーとオーランド・ブルーム、時々出てくるジャイモン・フンスーに頼っていて、人間ドラマ部分になった際の減速が著しいと感じた。まず作品を動かす主役のヤンの印象が薄い。主役だから沢山出てくるけどどんな人物かあんまりよく分からなかった。レースでヘルメットのシーン多いので表情とかから伝わりにくい?最後にモデルになったヤンご本人登場もあるが、朴訥な良い人そうだもんな…良い人なのはいいんだけど。さらにそれ以外のライバルになるレーサーや候補生達、母、弟、彼女までがなんか描きこめてないし書き割り的に感じた。Based on a true storyだし『最後は表彰台に上がれるんだろう』という予想がつく分、気持ちがあんまり盛り上がらないというか。人が亡くなった事故をストーリーの起伏に使われてもなぁ…というのもある。それも事実なんだろうけど。この作品で起きてる事自体はそのアイディアの発端を含めて荒唐無稽だが、映画にしてみたら案外普通の直線の話になった、という感じかな。

ゲームをやってきたからこその利点、みたいな事はあんまり前面には出て来ない。逆にリアルでレースを戦ってきたからこその利点も。なんかそれがよく分からないまま、ラインがどうこう言いながらヤンが勝ってしまう。結局ゲーマーがレースに挑戦云々の話ではなく、ヤンにレースの才能があっただけで、グランツーリスモをやってた人から選抜してその才能を発掘した話ってことか…と今さらながら合点がいった。

デヴィッド・ハーバー好きとしては怒ったり叫んだり意地悪だったりイタズラっぽく笑ったり優しかったりするヒゲのおじさんを沢山見られて充分楽しめた。

「へぇー、『グランツーリスモ』のゲームってこうやって緻密に作り込んでるんだね…」が見られたのが一番の収穫かも。
yassoon

yassoon