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瞳をとじてのandesのレビュー・感想・評価

瞳をとじて(2023年製作の映画)
4.1
ほぼ3時間の長丁場、淡々とした演出だが、映画と人生にまつわるサスペンスを織り交ぜたドラマが構築できている。
冒頭からの劇中劇が良い。"あの時代"の雰囲気の映画が提示される喜びは映画ファンほど感じるはず(カンの良い人ならすぐに劇中劇ともわかる)。
カメラが「寄り」で捉える事が多く、セリフからも"老い"が大きなポイントとなる(エリセ自身の老いも影響があるだろう)。主人公も老いの答えを求めているフシもある。さらに、何が自己という存在を定義するか、という「問い」もほのめかされる。それが、常に役柄を演じる「俳優」と絡まる展開はスリルがある。
後半、映画が現実として作用する瞬間は鳥肌が立つ。さらに、現実として提示される眼前の物語も勿論、虚構なのである。やたらと「第四の壁」を使うカットも多く、メタ的で示唆的である。最後に登場人物が映画館に集合するカットは感動する。我々も含めて、全員が映画と対面するのである。
話自体は、過去の重荷にけじめをつけた男の物語で、意外と王道。惜しむらくは、意図的ではあるにせよ、やや話が小ぢんまりしており、傑作になり得た可能性がある出来の良い佳作となっている点。とはいえ、老練な監督から映画に対する素晴らしい謝意を感じることができる。果たして、ドライヤー以来の「奇跡」は起きたのだろうか?
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