サプライズ

瞳をとじてのサプライズのレビュー・感想・評価

瞳をとじて(2023年製作の映画)
4.4
映画の奇跡

原題:Cerrar los ojos(仏語)には、思わず目を瞑る、見て見ぬふりをするといった意味合いがあり、邦題である「瞳をとじて」は〈とじてください〉の指示語ではなく、〈とじてしまう〉と解釈するのが正しいと思う。このタイトル、エンドロールの直前まで何が何だか。だがそのシーンを見た途端、普遍的なテーマでありながら監督が31年振りに長編のメガホンを取ったことが瞬時に理解できるほど、とんでもなく綺麗で、その反動から涙が出てしまった。ビクトル・エリセ作品初挑戦だったから身構えていたけど、これはやられた...。

169分とかなりの長尺だけど、退屈ゼロ。こんなシンプルな人生ロードムービーなのに、巨匠の凄腕に永遠と入り込んじゃう。何万とあるコマからどのコマを取っても、部屋に飾りたくなるような絵画的な魅力がある。語りたいところは山ほどあるんだけど、中でも好きなのはいくつかある、登場人物が歌を口ずさむシーン。ギターと共に海辺で、古屋の外のベンチで、そして映画の中で。自分の映画史に残り続ける、かつてない名シーンたちを本作では見ることが出来た。ありがとう、また撮ってくれて。

2024-41
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