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瞳をとじてのOKkynのレビュー・感想・評価

瞳をとじて(2023年製作の映画)
4.0
ふるえた! 2回目にしてようやく。見終えた後の放心状態ったら(ようやく)。1回目は話の筋を追うので精一杯だったのかな。わたしにしてはめずらしい。じつは今回スクリーンで初めて見た「ミツバチのささやき」もやっぱり2回劇場に足を運んだ。1回目はめちゃ疲れて寝不足のときにいったら、ゆっくり流れる時間にまんまと吸い込まれたから。
「瞳をとじて」は、なんとなくこれまでのような抒情詩的なものを想像してたから、あれ?ってなったのもあった。ミステリー? とまどってるうちにあっという間に過ぎた3時間を2回目はしっかり受け止められた。

なにがこんなに震えるのか考えると、結局音楽なんだと思った。自分の場合。エリセの映画ってやっぱり音楽とともにある。「ミツバチのささやき」でもピアノが置いてあって、母親がポロンポロンとゆるい調律(それがまたいとおしい)で弾いているのはガルシア・ロルカが採集したスペイン(アンダルシア?)民謡「zorongo(ソロンゴ)」らしい。「ポルトガルここに誕生す」の中のエリセの短編も大好きで、おっさんが弾くアコーディオン、しみたなあ泣けたなあと思い出す。エリセの映画への思いの強さはよくいわれるけど、音楽への愛も相当なものだと思う。

海辺でギターつまびきながら歌ったシーン、昔のタンゴを歌うシーン×2、たまらなかった。海辺で「僕たちが好きな映画の曲をやってよ」といってやったのは「リオ・ブラボー」の「My Rifle My Pony and Me(ライフルと愛馬)」だとわかったけど、修道女が「昔は私たちの村でもよく踊ったものよ」っていってた古いタンゴはなんの曲だったんだろ。
船に乗って何度もやっていたからもやい結びとか水平結びを体が覚えているのと同じように、漆喰塗りや修理なんかも、労働者の手によってそれが染み込んでいるのと同じように、歌うことであるとか、演じること、そして映画を見るということも彼らの中の深い部分に刻み込まれているものなのだろうな。それはつまり生きることそのものなんだ。それが救いであり、希望でもあり。

いやあ、それにしても「Soy Ana」のセルフオマージュにもぐっときたなあ。ぐっときながらもにやりとした。

じつは同じ日に4Kでリバイバル上映してる「テルマ&ルイーズ」見てかなりもやっもやしてたから、いったんもやもやおさまってよかった(考えるとまたもやもやしちゃうけど)。

「ミツバチのささやき」のサントラはでていないんだね。振り返って聴きたいなあ。すきっ。
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