022/2024
この作品だけは何としてでも必ず劇場で観ようと決めてました。
10年間で1作品と言われた巨匠ビクトル◦エリセ監督の31年ぶりの新作。
前作「マルメロの陽光」は(一応)ドキュメンタリーだったから劇映画としては実に41年ぶり。
まさか目の当たりにする日が来ようとは!
「瞳をとじて」と言えば平井堅の歌
「♪ひとみーをとーじてー きーみをえがーくよー」
ですがまさしく瞳を閉じるのは記憶を呼び起こそうとする時ですよね。
今作に限らずビクトル◦エリセ作品において「時間」とか「記憶」は毎回重要なテーマだと思うのですが今作の記憶を追い求めるガライの姿はそのままエリセ監督に重なる気がします。
映像や写真に残っている事象は確かに存在していたはずなのに今はもうどこにもその面影はなくあるのは記憶だけ。
タンゴの歌や知るはずのない結び方ができることに象徴されるのは過去にあった確かな記憶の片鱗ですよね。
「わたしがアナよ」のセリフで呼び起こされる記憶。
50年ぶりにアナ◦トレントを出演させた意図もきっとそこにあると見て間違いないでしょう。
ガライの好きだった曲をロラが思い出しながら弾くピアノの旋律。
白い漆喰で壁を塗る二人と手前で靡くシーツ。
ギターの音と共に海辺の家でトニ達と語り合うシーン
全編において静謐で詩的でとても美しい。
映画を観るシーンで終わる今作は
映画を観るシーンから始まる「ミツバチのささやき」に繋がりループは完結しているように見えるがこれは最後の作品という意味なのかな。
そしてマックスやアナから無駄だと言われても劇場での公開を半ば強行するラストシーンが意味するものは失われゆくフィルムメディアへの最後の希望なのだと感じました。
本当はもう一本別の映画を同じ日に見ようとしていたがこの作品の余韻に浸りたくて今日はやめておきました。
それにしても最近アキ◦カウリスマキ ヴィム◦ヴェンダース ジャン◦リュック◦ゴダールそして今作ビクトル◦エリセと伝説級の監督作品が目白押しで嬉しい限りですね。