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瞳をとじてのペインのレビュー・感想・評価

瞳をとじて(2023年製作の映画)
4.7
今年に入って、とにかく3月2日からのピーター・グリーナウェイ監督特集に行くことだけを最優先に掲げていたけれど、途中怒涛の新作公開に誘惑・翻弄され困っている(※昨年も2月・3月は本当に凄いラインナップであった✏️)。

ただ、この『瞳をとじて』は本当に劇場で観られて良かった。“記憶の再構築”たる「映画」、メタシネマの最高峰。緩急無くずっと騒がしい“ボーちゃん”とかを見た後だと、余計にこの奇を衒わない腰を据えた語り口が何より心地好かった⭕。あゝ、今自分はゆったりと映画に浸っているというその感覚。

たしかに“鮮烈”、“衝撃”な処女作『ミツバチのささやき』と比べれば、エリセ監督の語りはお爺ちゃんだし、映画自体もそんな“老いるショック問題”に切り込んだ作品にもなっている。※近年のヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督作(『雪の轍』『読まれなかった小説』)辺りに近い味わいも感じた🤔

ただ劇中セリフにもあるように、“問題はどう老いるか”なのである。確実にこの映画及び、エリセ監督は歳を重ねつつも老成、発酵している。

ある種、私の好きな近年の『クライ・マッチョ』や『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』等の温さが心地好い老巨匠監督による“お粥映画”でもある。勿論、イーストウッドやクローネンバーグが作るお粥とは別ベ(ビ)クトルだが、実に芳醇な映画と言えよう。2024新作暫定今年ベスト。
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