すえ

瞳をとじてのすえのレビュー・感想・評価

瞳をとじて(2023年製作の映画)
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記録

こんなにも、こんなにも悲しく、寂しい映画があるだろうか。観ていて辛くなった。

エリセは多分、時の流れが怖くなってしまったんじゃないかと思う。残酷なほどに真っ直ぐに進む時間、それに置き去りにされることが怖かった。その順行する時間に負けてしまったとも言えるかもしれない。

時の進行は、戻すことも止めることもできない。我々は映像として、映画として、その流れの一部を保存することしかできない。エリセは怖くなった。だから記憶、そして自分を映画として保存したかったのだろう。

時の断絶は深く、そして恐ろしい。その意識がカットに表れている、驚くほど長いカットはそれそのものが時の断絶となりうる。時間に対する恐れというものがこの映画には宿っていると思う。

それでも、エリセの光は死んでいなかった。彼はもう映画を撮らない、撮れないかもしれないが、彼の作品は、彼の光は生き続ける。それだけは確かだ。

映画は死なない、たとえ多くが忘れられても、進みゆく時間に負けない。そう信じたい。

2024,51本目(劇場12本目)2/27 TOHOシネマズなんば・別館
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