木蘭

瞳をとじての木蘭のレビュー・感想・評価

瞳をとじて(2023年製作の映画)
3.1
 導入部と終演部のみが撮られた劇中劇が象徴する様に、自分は長編映画が作れない・・・という監督の告解を聞く169分。

 長ぇよ!!
 美しく印象的な映像を、良く言えばユッタリとしたテンポで描く・・・悪く言えば眠たい作風なので、三時間弱も集中力が持つはずも無く、何度も寝落ちしかけた。周りの客もずっとモゾモゾと動いており、肉体の限界という物がある。
 うつろな頭で必死にスクリーンを見ているのに、本筋と関係ないシークエンスを長々と映したりするので、話の輪郭すらボンヤリした印象しか残っていない。

 じゃぁ、全く駄目かというと、非常に印象的なシークエンスもある。
 オープニングに流される劇中劇の導入部は非常に魅力的だし(本編より)、時折、年を経て誰しもが過ぎ去ってしまった自分の人生を思わず重ねてしまう様な、不思議な浮遊感が漂う情緒的なシーンもある。元恋人とのシーンは、思わず泣いちゃった。
 何よりもエンディングの、全てを捨てて逃げ出したけど愛する映画からは逃げられないだろ?というラストシーンは素晴らしい。本当に良い。青い光に映し出された監督と、俳優だった男の表情は最高。

 なんだけど・・・結局、エリセ監督はちゃんと長編映画を作れない人なんだよな・・・。
 印象的なオープニング、今一つ凡庸なエンディング、描けなかった中間部という未完成の劇中劇が象徴する様に・・・印象的だが(印象的な部分ほど)繋がりが弱い本編のシークエンスしかり・・・それって長編劇映画の監督としては駄目なんですよ!分かっているんですよ!と作品が詩的に語りかけてくる、非常に私的な作品だった。

 処女作にしろ、2作目にしろ、同じ様な作風ではあるけど・・・自由に制作が出来なかった事が、結果として吉と出たんだろうな。
 鬼プロデューサーが残酷にカットしまくって、90分位にまとめたら傑作として記憶されたかも。
木蘭

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