いけ

瞳をとじてのいけのレビュー・感想・評価

瞳をとじて(2023年製作の映画)
4.0
いい時間だった。

年老いた男性の繊細な友情をものすごく丁寧に描かれていた。
2人で建物に漆喰を塗るシーンは思わずウルッと来てしまった。
一筋縄にはいかない人生だったけど、最後に残ったのは2人の友情なんだなとしみじみ感じた。
その後、お互いに白いペンキをつけた顔で同じご飯を食べてる姿があまりに愛おしくて、シスターたちと同じニヤニヤ顔で見てた。

主人公とマックスの腐れ縁感も良かった。
「やれやれ」って言いながら、主人公のことを今までたくさん助けて来たんだろうな感じられた。
そして、最後の上映会に向けて準備する主人公の姿が、「昔はこんな感じで現場仕切ってたんだろうな」と想像できるのも面白かった。

映画のための映画という性格もある作品だった。
主人公がフリオの失踪に思いを馳せる妄想のシーンで、フリオが大きな鉄棒の枠の中に収まる印象的なカットがあった。
映画はカメラで切り取られたカットの連なりで、あくまでフレームによって切り取られた部分しか見れないということを強く意識させられた。

「瞳をとじて」というタイトルが何を意味するのかは考えさせられた。
「死」を意味しているとも思う。
アナがフリオに再会した時に瞳を閉じて自分の名前を告げるけど、「恐怖」や「不安」も意味してるとも思う。
失踪したフリオを想像して思いを馳せることも意味してるとも思う。
最後に映画を見終わったフリオが瞳をとじて、ブラックアウトしていく終わり方が味わい深かった。暗闇にフリオの目と鼻の残像が残る感じ。正に映し出されては消えていく映画そのものって感じ。

一つ気になったのは、高齢者施設の納屋みたいな所で暮らすフリオのプライバシーについて。
留守中に戸棚をさぐられたり、ノックをせずに人が入ってきたり。
まあフリオが気にしないタイプの人間だからかも知れないけどさ。
いけ

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