イワシ

瞳をとじてのイワシのレビュー・感想・評価

瞳をとじて(2023年製作の映画)
4.2
アナ・トレントが見つめるホセ・コロナドの足の裏。エスタブリッシングショットまたはフルショットによる空間の提示、着席からのバストショットの切り返しと躊躇なきクロースアップの挿入。着々と向き合う二人を撮り続けたからこそ、振り向くという動作の導入の予感に動揺する。

ミゲル・ガライは半ば闇に溶けながらスクリーンを見つめるホセ・コロナドに振り返る。スクリーンのベネシア・フランスコとかつてのコロナドの複数化した切り返しのようなまなざしが観客席に注がれる。観客席に座すコロナドは銀幕からの視線を浸透させるかのように瞼を閉じる。振り向くことと瞳をとじることはどこか通底しているように感じる。

アナ・トレントのクロースアップの素晴らしさは言うまでもなく。ベネシア・フランスコも同様。「ライフルと愛馬」をギターをつま弾き、途中躓きながら歌う場面の人物の位置関係とショットのつながりはオリヴェイラ『永遠の語らい』を連想。しかしそんなことはどうでもよくただ良い。
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