寺町今出川

瞳をとじての寺町今出川のレビュー・感想・評価

瞳をとじて(2023年製作の映画)
4.2
「ミツバチのささやき」のビクトル・エリセ監督31年ぶりの新作。まさか新作を観れる日が来るとは思ってなかった…エリセ作品はもう記憶の中だけの物としか思っていなかった。失踪した俳優を探す元映画監督の記憶を巡る物語そして色んな喪失と向き合う物語。何十年の歳月を遡る旅は、そのままエリセ監督の歩んできた道を辿ると言う風情がありエモい。映画と言う記録の中に封印された記憶…監督自身の映画人として総括的な作品なのかも知れないし、映画のための映画とも言えるかも。もちろんエリセ作品に触れた事が無くても美しい映像には惹きつけられる映画。劇中で「カール・テオドア・ドライヤー監督が亡くなって映画の『奇跡』は消えた」と言う作品名を用いた台詞があったが、私はそうは思わない。ベテラン監督の新作でも、新しい監督のデビュー作品でも劇場で「映画の奇跡」に出会う事が今もあるし、エリセ作品を観れた事もある意味で奇跡。そしてエリセ監督自身も映画の奇跡を信じている終わり方に感じた。そんな奇跡を求めて今も劇場に足を運ぶのかも…
「わたしはアナよ」の台詞はまさに奇跡
寺町今出川

寺町今出川