レインシンガー

瞳をとじてのレインシンガーのレビュー・感想・評価

瞳をとじて(2023年製作の映画)
3.4
あのヴィクトル・エリセの31年ぶりの新作と言うことで、公開前からかなりの話題になっていたにもかかわらず、公開後にあまりあちこちで語られることなく消えて行ってしまう印象なのだが、多分みんなどう語るべきか、どう見たらいいのか、そもそもこれは傑作なのかどうか、扱いに困ってるんじゃないかなあ、という感じがした。
公開から少し経って観た自分の感想も実はそんな感じなので、そんな風に邪推してみました。

公開前に「ミツバチのささやき」「エル・スール」だけは当然のように観直して、若いころには分からなかった(じゃあ今は十分に分かってるのか、と言われると困るのだけれど)演技や描写の意味がジワジワと染みこんできて「やっぱりこれらは傑作なのだ」と再認識したので、では本作は?ということになると、やっぱり少し困ってしまう。

過去の諸作にも観られた「映画というモノへのこだわり」がメインに据えられているわけだから、これは一種の「メタ映画」と言ってもいいのだが、そこに、これも「エル・スール」などに顕著だった「過去を生きた人物の通ってきた道」が「不明瞭であることへの許容」と、それでも心に残る「敬意」はしっかり描かれるので、伝えてくるテーマのようなものはちゃんと伝わってくる。

しかし、やはりこの物語で170分は長すぎないか、というのが映
画ファンとしての偽らざる気持ちだ。
主人公が思い悩みつつ、それでも探し求めている人物の心の軌跡に出会う、というこの物語を、この半分の長さで端的に見せてくれたら、多分もっとみんなが語りたくなる映画になったのではないか、と不十分な考察をしてみた。
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