ひのらんげ

湖の女たちのひのらんげのレビュー・感想・評価

湖の女たち(2023年製作の映画)
2.5
映像のゆったりした雰囲気の中、私の頭はぐるぐるまわり、それでも置いてけぼりをくらったような。

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高齢者介護施設で入居者の不審死。早朝に人工呼吸器が何らかの理由で停止していたため、これを殺人事件として2人の刑事が捜査をはじめる。疑わしきは介護職員。

殺人事件であるならば、絶対に犯人を”作らなけらばならない”警察の不当な取り調べ、被害者の過去とその周辺の過去の事実。
支配する側と支配される側のそれぞれの欲求、体制側と従属側の立場と理由。

物語は、複数の太いストーリーを編み込みながら、その先で溶け合って併合される。

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”普段”という幸せを放棄して支配欲に走る刑事と組織に従属することでかつてのトラウマに蓋をした刑事のコンビ、支配欲の強い主を検知して支配されたいという欲に負けて刑事を引き寄せる介護士。かつて731部隊だった被害者と、美しいものを見てもそれを美しいと思えなくなってしまったその妻、自分の仕事の意味に接近し、それをまっとうしようとする記者や介護士と、それにあこがれ・・または軽蔑して不気味に微笑む少女。

フォーカスされるポイントがちょっと多く、頭が悪い私には高度すぎてついていけませんでした、、残念、、それぞれの登場人物の心情は複雑で、過去を引きづっているのはわかりますが、それが多い、、

ラストに到達しても、 なんだか映画とのコミュニケーションが一方通行とうか、私から映画に対して何も言うことがないなぁ、という感覚になってしまいました。

ミステリーとしての落としどころが不明瞭であること自体は嫌いではありませんが、それを私に投げかけるわけでもなく、ただ事実としてわかっているところまでの映画です、という感じの、ある意味すっきりした印象もあり、楽しみ方がわかりませんでした、、、

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問題提起として「世間から不当に低い評価を受けている介護職」というものがあったと思います。この問題提起は素晴らしいと思いますが、リアルすぎるその勤務の実情(日勤のあとそのまま連続で夜勤など、、)は、その惨状を見せるだけで、暗く、そして出口がなような印象を表現しているように思います。介護の仕事にプライドを持つ「松本郁子」がそれでも介護職をする、続ける理由をもう少し鮮明にしてほしかった。

「佳代」が高齢者の存在理由を否定した少女をひっぱたいたとき、佳代の、それでも介護職としてのプライドを感じました。このビンタは「松本郁子」と紐づけて表現してほしかった。(「お前がひっぱたくんかい!」とは思いました)

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記者は「世界は美しいか?」と問います。これは閉鎖的な社会的環境・組織では常にNO、それ以外では常にYESだと思います。

支配的な雰囲気に誘われてそれに従属する人たちが集まった集団。
腐った組織は元には戻りません。

記者の「世界は美しいか?」の問いが、この映画に出てくるそれぞれの組織の範囲に対するものであれば、つまりこれはNOです。

他方、たとえば湖。そしてそこに住む水生生物は美しい。美しいはずだ。だからそれを観察したくなる。

「市島民男の妻」は、あの湖での一件以降、美しいものを見ていないという。組織に囚われて離脱できなくなってしまったのだと思う。もっと早く離脱すべきでした。悲しい。

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性悪癖やクチャラー、取り調べの態度の悪さ、家庭内での雰囲気などで福士蒼汰の味を変えようとしていると感じましたが、さわやかさに対して無理やりコンフリクトをさせているように見えました。(打ち消し切れていない)

今、映画を観終わってカフェでこれを書いていますが、隣席の方が今まさにクチャラーです。ドリアを召し上がっております。どうして、こう、舌をだして口から迎えに行っちゃうのかなぁと。笑。
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