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奪命金のdaiyuukiのレビュー・感想・評価

奪命金(2011年製作の映画)
4.2
金融都市、香港。妻から新しいマンションの購入をしつこく相談されている香港警察のチョン警部補(リッチー・レン)は仕事を口実にいつも話をそらしていた。銀行に勤める成績下位の金融商品営業担当テレサ(デニス・ホー)は、ノルマ達成のため、中年の女性顧客チェン(ソン・ハンシェン)に、躊躇いながらもリスクの高い投資信託商品を売り付ける。気がよくて人望の厚いヤクザのパウ(ラウ・チンワン)は、逮捕された兄貴分のために保釈金を作ろうと同郷の投資会社社長ロンに相談する。3人それぞれが金銭の悩みを抱えていたところにギリシャ債務危機が発生し、金融資産が突然の下落。投資家たちは大騒ぎになる。大陸マフィアの金を流用した投資に失敗したロンは、その穴埋めのために高利貸しのチャンから金の強奪を計画。パウはその計画を手伝う羽目になる。内緒でマンションの仮契約をしていたチョン警部補の妻は、返済に不安を感じていたところ、テレビニュースで夫が犯人と一緒にエレベーターに閉じ込められていることを知る。顧客からのクレームが殺到するテレサの元に1000万香港ドルを下ろしにやってきた高利貸しのチャンは、顧客の担保が足りないことに気付き、書類にサインをしないまま半分の金を残して帰ってしまう。チャンが携帯を置き忘れたことに気付いたテレサは後を追うが、駐車場の車の中で血まみれになっているチャンの姿を発見。デスクに残されたチャンの500万香港ドルをとっさにキャビネットに隠す。金融パニックに巻き込まれた彼らに、いかなる運命が降りかかるのか……?
ギリシャ債務危機により起こった金融危機により天国と地獄を味わう3組の人々のドラマ。
マイホームやローンに追われる警察官、巨額のノルマをこなすために年寄りの貯金や年金を高リスク高配当の投資信託に投資させる金融商品担当銀行員、兄貴分の保釈金を稼ぐために危険な投資仲介するヤクザ、それぞれが物価高や福祉の貧弱さ経済の冷え込みが原因の先の見えない今から脱出するために危険でルールや義のないマネーゲームに踏み込み天国と地獄を味わう3組の群像劇は、自分たち一般人の誇張した姿そのもの。
香港に蔓延るルールも義もないマネーゲームとそれに狂奔する人々に対する批判と風刺を込めたジョニー・トー監督の異色作で、ジョニー・トー監督が銃撃戦がない映画を作ってもスリリングであることを証明した作品。
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