Drエメット

ローマの休日 4K レストア版のDrエメットのレビュー・感想・評価

4.1
久しぶりに鑑賞。
こんなにおもしろかったのかと驚くほど面白かった。

恋愛映画としてのおもしろさ。
アン王女の成長物語としてのおもしろさ。
嘘を題材とした映画としてのおもしろさ。
戦争を題材とした映画としてのおもしろさ。
いろんなおもしろさを感じた。

前見た時は、恋愛映画というイメージが強かった。オードリーヘップバーンの美しさ、うっとりとした表情の妖艶さみたいなところがとても魅力的、というイメージだった。もちろん、今回もそれはすごく感じた。ダンスパーティのあとで2人が初めてキスするシーンのオードリーは、すごい色気だったし本当に美しかった。


成長の物語という意味でも、オードリーの演技力が際立っていた。
最初のベッドで寝かせられるシーンでは無邪気さとか幼児性が感じられるし、最後のシーンでは王女としての気高さ、使命感みたいなものが感じられる。
王室としての仕事としてやらされていた、自分には関係ない世界のための仕事だった外交の仕事について、市井での暮らしによって現実味を持った問題として理解することができたっていうストーリーと、
初めて愛を知り、それを恋愛的なものだけではなく世界に対する愛として理解し、世界平和のための使命を全うする決意をもつ、というストーリーの両方が描かれていると感じた。

また、主人公2人はずーっと嘘をつき合っているっていうのが一貫してあり、思ってた以上に嘘をテーマにしている映画であると感じた。
アン王女が元々言わされていたスピーチも嘘だし、脱走後にはブラッドレーに嘘つきまくるし、王室に戻った後もなにしてたの?って聞かれても嘘を言うし。
ブラッドレーも、寝坊したときも嘘でごまかそうとするし、アン王女だとわかってからもベッドで寝かせたと嘘つくし、職業も嘘言うし、偶然再会した風を装うし。
これは赤狩りの時代で嘘で身を守る必要があった時代っていう背景があるのかなと思った。
この映画の代表的なシーンが、真実の口のシーンであることも、嘘を題材にした映画のアイコニックな部分ということなのかなと思った。

嘘という点で、スパイファミリーってローマの休日をめっちゃ意識してるんじゃないかと思った。
アン王女、アーニャって名乗るし。
孤児院のアーニャと、王室に閉じ込められてるアン王女。
両者共通して幼児性を持っており、そこから成長していくストーリーが描かれている。
ロイドフォージャーとアーニャも、互いの秘密を打ち明けずに、利害が一致するから利用し合うつもりで一緒にいるんだけどそこに愛が芽生えてくる。
また、裏に戦争というテーマがあって、スパイファミリーはまさに冷戦の時期の話で、ローマの休日が作られた時代の話だし。
なんかスパイファミリーとローマの休日に共通点があるなんて考えたことなかったけど、アーニャっていうキーワードから考えるとすごく腑に落ちた。おもしろい。

ラストの結末は、いまだったら逆になりそう。個人の願いのために駆け落ちした!っていうのがハッピーエンドっぽい。エヴァの破みたいな。でも、そうなんなかったのは、まあ時代背景もあるだろうけど、脚本家の思想とかが影響してる気がする。そして、あのラストだったから今でも名作とされている気がする。
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