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裸のランチ 4Kレストア版のsymaxのレビュー・感想・評価

裸のランチ 4Kレストア版(1991年製作の映画)
3.7
"…ジョーン…ウィリアム・テルごっこをしよう…"

害虫駆除員として働くウィリアム(ビル)・リー…ここのところ薬剤が足らなくなっている…それもそのはず、ビルの妻ジョーンがゴキブリの薬剤を打ちハイになっていたのだ…元々麻薬中毒者であったビルは、妻が勧めるままゴキブリの薬剤を打つ…ハイになったビルとジョーン…
おもむろにウィリアム・テルごっこをやり、ビルは誤ってジョーンを撃ち殺してしまい"インターゾーン"に逃げたのだ…

"12ヶ月のシネマリレー"の一本として4Kレストアされ蘇ったクローネンバーグ監督の傑作…

私が大学生の頃、ハマりにハマった"ビートニク"…ジャック・ケルアック、アレン・ギンズバーグと共に、その著作を読みまくったウィリアム・S・バロウズの最高にしてさっぱり訳の分からん傑作"裸のランチ"…それをあのクローネンバーグが映画化…いやいや、無理でしょ?と疑いつつ劇場鑑賞したあの日が懐かしい…

そもそもバロウズの"裸のランチ"に明確なストーリーは無く、"カットアップ"という実験的なテクニックを駆使して書かれた作品ですが、この"カットアップ"なる技法、文章をバラバラに刻んでランダムに繋げる技法で斬新且つシュールなんですが…これが何が良いのかさっぱり分からず…なんとくなく"すげーな"との感覚で読むモノと私的には理解しバロウズの作品を片っ端から読みましたが…全く理解できない…

ですから、クローネンバーグがどう表現するのか当時公開を心待ちにし、初日に鑑賞しました…で、率直な感想は…"そうくるか"でした。

当時の私は、知ったかぶり全開の生意気な学生で、理解している風でしたが、ぶっちゃけ何が何だかさっぱり分からず、初見では生意気にレビューしましたけど本作の良さを理解しきれていない部分が多かったのでした。

ジャンキーから見た世界を文章にしたバロウズ…
ジャンキーから見た世界を映画にしたクローネンバーグ…

劇中でウィリアム・テルごっこをやって妻を誤射するシーンは、バロウズ自身が起こした有名な事件なのですが、コレを作品に織り込む事で本作がクローネンバーグによるバロウズ論であるとの意味合いが強くなるのです。

ジャンキーから見た妄想と現実の垣根を取っ払った世にも不思議な世界がスクリーンに映し出されるのです。

主役のピーター・ウェラーが、何処となくバロウズに似た風貌であることもミソですね。

バグライターやマグワンプが闊歩するこの世界観の見事さは流石クローネンバーグであります。

…"ニンフォマニアック"Vol.1とVol.2からの本作で今日は約6時間…ちょっと無謀…尻は痛いし、作品が重苦しくゲンナリしてしまいましたが、濃厚な時間をたっぷりと堪能させて貰いました…
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