Jun潤

あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。のJun潤のレビュー・感想・評価

2.5
2023.12.10

福原遥×水上恒司
タイムリープものの流行りに乗っかっちゃったのかな??
移動する先の時代が時代だけに、SF考証は本気でさせていただきましょうか。
しかしまぁ、戦時中の日本についての知識が若干深まっているこの頃、半端な感動ポルノで終わってしまいませんように。
「“泣けるとSNSで話題”は地雷フラグ」ということを否定してくれ……

2023年、夏。
女子高生の百合は進路選択を家庭の事情から、母親や先生のアドバイスを無視して就職に決めていた。
しかし百合の母は先だった夫の思いも込めて百合に進学を諭すが、口論になってしまい百合は家を出ていってしまう。
豪雨の中、百合は林の中にある古い祠の中で物思いに耽っていたが、目を覚ますと、1945年にタイムスリップしていた。
猛暑の中、百合は軍人の彰と出会う。
彰に鶴屋という軍人のための食堂に連れて行ってもらい、現代に帰ることができない百合は住み込みで働くことにする。
食堂で彰と再会した百合だったが、彰は特攻隊員として基地に滞在し、いつ飛び立つかも分からない状態であることを知る。
戦争の結末、日本の行く末を知っている百合からすると特攻隊員たちのことを理解できずにいたが、その中でも目の前の今を生きる彰に惹かれていく。
次第に大きくなっていく戦争の足音、2人を引き裂く運命はすぐ側まで迫っていた。

戦争を結果論で語ったらアカンでしょうよ……
もう戦時中とか、ロマンスとか含めてペラッペラよ。
現代人が見る戦時中の日本の様子とか、家族愛とか、特攻隊員と現代の女子高生との淡い恋模様とか、全部中途半端でどこにも振り切っていないし、描写を少しでも間違えると右か左に文句つけられそうなセンシティブな舞台で、作品自体が加減を探っていたような印象を受けてしまいました。
上述の通り現代人からしたら戦争について論じることは当時の人たちよりも簡単に出来てしまうのだから、そんな風になるぐらいなら逆に、特攻隊員が現代の日本に来てコメディを挟みながら日本の未来を本当の意味で憂う作品とかの方がよっぽど観応えがあったと思います。

SF考証に関しては、一応問題は無かったのですが、あまりにも問題が無さすぎて、マジでちょっとした戦時中の日本見学ぐらいにしかなっていませんでした。
もうちょっとこう、多少拗れたとしても戦時中の彰と現代の百合に血縁的な繋がりがあるとか、手紙の中身だってあんな雑じゃなくて『仁』みたいなエモーショナル満載な感じにも出来たでしょうに。
まさか本当に何もなく終わっていくとは。

特攻が無かったらとか、戦略的にどうだったかを今作から見るのは多分違う気がするので、彰が言ったような目の前の今の行動の積み重ねが尊い未来に繋がっていくということにフィーチャーすると、百合の父親の死がマジでなに……
それに現代人から見ても彰が言ったような尊い日本の姿に本当になっていますかって話ですよね。
脱線した話かもしれませんが、案の定劇場内は鼻ズビズビ音がそこら中から。
2人の儚い恋愛模様に対する涙なら分からなくもないけど、特攻そのものやその意味に対するものだったらちょっと違うんじゃないかと思ってしまいます。
本当に結果論だから特攻に意味があったのかどうかを論じられますが、極論今自分がしている勉強や仕事も、50年後や100年後にどんな意味を持っているのかは誰にも分からないわけですよ、それこそ未来から女子高生がタイムスリップでもしてこないと。
なのでその涙は作品の登場人物たちに向けてのものというよりは、自分たちの人生の営みが儚いかもしれないということに向けて欲しいですね。

主題歌は福山雅治が今作のために書き下ろした『想望』。
よほど思い入れが深いのかエンドロールに字幕がついていましたが、これまた中身がどこかの層の人たちの琴線に触れやしないかというヒヤヒヤ具合。
しかし曲自体を、上述の通り特攻のことだけでなく解釈を広げて、今、大事な人のための行動が未来でどんな意味を持つのか、それとも持たないのか、そこに思いを馳せて聞いてみるとやっぱいい声してるなって感じです。

配役はまさかの『舞いあがれ!』福原遥→『らんまん』石坂慶子→『ブギウギ』水上恒司という朝ドラリレー。
Jun潤

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