ノラネコの呑んで観るシネマ

あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。のノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

4.2
現代の高校生の福原遥が、昭和20年の日本にタイムスリップ。
特攻隊員と恋に落ちる。
これもう設定があまりにもあざと過ぎて、ぶっちゃけ予告編見るたびに引いてたのだが、本編では特攻という愚行に対してははっきりとダメ出しをしつつ、当時の人の価値観も、なぜそう考えるのかを客観的に描き込むという、バランス感覚のある意外な良作だった。
現代視点で考えれば「特攻しよう」は頭のおかしい人の思考に他ならないのだが、主人公がよそ者の未来人として、当時の社会全体をドライに見ているのが効いている。
ただ、主人公の父親が子供を助けて事故死して、それで自己犠牲の意味について母と確執を抱えている設定は、ちょっと噛み合わない。
偶然の事故死と特攻は比較不可能だろう。
また最終的に主人公の感情を恋心という極めてパーソナルなところに落とし込んだので、そもそもタイムスリップはなぜ?という核心部分を含めて「なんとなく」に終わっており、特攻という犬死に制度を作り出したものの正体も曖昧なままだ。
まあ物語の構造的に難しいのだろうが、この辺りは戦争が終わって11年後を舞台にした「鬼太郎誕生」が、一番明確に描き出していたかな。
この二作の客層が被るとは思えないが。