MK

あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。のMKのレビュー・感想・評価

3.9
『おめでとうございます』
『ありがとうございます』
『死にに行くんだよ?』
『使い方間違ってんじゃん… 』

現代の、進路にも人生にも葛藤する18歳の高校生が太平洋戦争、敗戦間際の日本にタイムスリップするお話。

今更太平洋戦争の映画?しかもクリスマス時期に需要ある?なんて思って観に行ったけど、むしろ劇場は若い方ばかりで少し気恥ずかしいくらいだった。

…泣いた。既視感のある物語と感じるところもあったけれど、百合こと福原遥ちゃんにきっちり泣かされた。劇場も嗚咽が漏れ聞こえるくらいだった。

インスタで綺麗な子だなぁと思っていた出口夏希ちゃんも出ててびっくり。戦中の役柄とあって質素な雰囲気だったけど綺麗だった。

戦争の考察とかどうなの?やら、特攻と恋愛紐付けるのってなんか憚られる…みたいなつまらない感想もゼロじゃないけど、

人が人を好きになる。その人を愛する。
愛する人の将来や幸せに思いを馳せる。
そんな想いが相手の背中を押し、途切れてしまったその先の未来に活かされていく。
沢山の人々の優しさと思い遣りで未来が描かれていく物語はシンプルに刺さった。

死ぬのが怖い、愛する人と共に生きたい、将来を思い切り想像したい、未来に暮らしたい…こんな些細な希望が叶わないどころか、願うことすら憚られる世の中なんて、やはりおかしい。

そして未来を望まず、死を厭わないことが当たり前かのような世界とそれを強いる社会やシステムこそ狂っていると思いたい。

この前観た「ほかげ」の中で「戦争から戻ってこれなかった人は怖くなれなかったんだ」というセリフがあったことが思い出される…

優しい人たちの沢山の命…愛する家族や恋人、教師や同僚たちがそれらを悲しいくらい失ったんだと思う。

特攻という狂ったシステムや太平洋戦争に至るまでの近代日本の暴走をただただ非難したり悲観するのではなく、戦争という狂気の渦中でも優しい人たちの願いや思いやりがあって、それらが今の世の中を育んでくれたのだと思わせてくれる物語は、「永遠0」や「ラーゲリより愛を込めて」もそうだけど、今の時代にマッチしてる気がした。

自分だって行ったことも、見たこともないし、正直行きたくないし誰にも行ってほしくないし…

そして理由はどうあれ、行ってさまざまな傷を負ったであろう人たちを優しく受け入れる世の中であってほしい
MK

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