Binchois

あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。のBinchoisのレビュー・感想・評価

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福原遥ちゃんの制服姿もそろそろ見納めか。わざわざ原作読んで予習して臨んだぞ。
この原作小説がなかなか良く出来ていた。よくある特攻礼讃ものかと思いきや真逆。現代の少女の価値観をストレートにぶつけることで、戦時下の狂気を炙り出している。ライトノベルではあるが、著者の確かな文章力が見てとれる。
原作での主人公は中学2年生だが、映画では高校3年生の設定。それと比例するように、映画版は原作よりも奥行きが増している。
殊に甘味処の場面は味わい深い。「妹のような」百合ちゃんが、妹ではなくなる瞬間。水上恒司くんの表情もカット割りも繊細。原作でも感じていたことだが、百合が未来から来たことに薄々気付いてたんじゃないかとも勘繰れる。
伊藤健太郎くん、おかえりなさい。騒動前よりいい顔してる。憑き物が落ちた感じする。
そして主人公の友人・千代役の出口夏希ちゃんが大変上手い。わりあい明瞭な演技の福原遥と対をなすように、円みのある独特な空気感を醸している。河瀨直美作品に出てきそうな佇まいだ。

量産型恋愛映画とは一線を画す、繊細で趣深いシーンが随所に見られ、意外と満足度は高かった。
しかしBGMは王道コテコテのお涙頂戴テイストである。「泣ける」を売りにしている以上は仕方ないか。

というかこの映画、河瀨直美監督に撮ってほしいな。音楽一切なしで、ぽつぽつと喋る福原遥ちゃんの手持ち接写とか、風に揺れる百合の園の超長回しとか、めっちゃ見たくない?

※朝ドラ前々ヒロインの岩倉舞×現ヒロインの彼氏村山愛助
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