トールキン

あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。のトールキンのレビュー・感想・評価

4.1
よく耳にするいわゆる「尊い命が犠牲になる」という言葉がある。普段何気なく、何不自由無く当たり前の日常を送っている僕自身からすればその尊い命という本質的な意味は分かっていないと思う。本作の18歳の少女、百合は1945年の戦時下の時代で実際に生きたからこそ、その命の意味を理解出来たのではないかと思う。

太平洋戦争末期の時代、兵隊さんは玉砕覚悟で戦いに挑み、それによって自分の命を犠牲にしてしまう。それがお国のため、上からの命令であっても自ら志願したことであっても、彼らは自分の気持ちに納得はせず割り切って挑んでいたんだろうし心の中では怖かっただろう。本当に自分の命が惜しかったら逃げ出して愛する人の所へ向かってもおかしくない。何ならそれが賢明な判断な気さえする。
戦時下における日本の社会情勢や国民性やその他諸々、(作中にも出た) 何かが人の心をそうさせてしまった。それが当たり前な風潮となってしまったのではないか。いわゆる戦争のせい、時代のせい、みたいな。だから現代人の百合がそこに疑問を思うのは当然だし客観的に見て僕自身も戦時中の情勢とは言え、何で?と疑問に思ってしまった。
なので、見た方は分かってくれるだろうけど、板倉さん絡みのシーンはめちゃくちゃグッときた。

尊い命を頂いて、そのおかげで私たちは生きている。と言うよりも生かされているという表現の方が正しいのかもしれない。日々生きている(生かされている)ことに改めて感謝しなければならない。
生きたくともそれが叶わず亡くなってしまった先人たちの分まで生きている者は一生懸命生きていかなくてはならないということかもしれない。めちゃくちゃ普遍的ながらもそんなメッセージ性を真っ直ぐ受けた気がする。


愛する人と一緒になりこの先共に生きていく。そんな現代では普通なことが叶わなず離れ離れになる。そんな不条理な無念さがめちゃくちゃ伝わってきて涙腺ゆるゆるだった。て言うか泣かせる演出盛りだくさんやし、完全に製作側は泣かせにきてるよね。終盤はもうずっと涙ボロボロだった。最後の博物館のシーンヤバいて。さらにタイトルアップを最後にもってくるのもズルいし、からの福山雅治さんのEDは歌詞が内容とリンクしまくりでさらにグッときた。

予想以上の内容で大満足でした。去年公開の作品だけど個人的に今年のトップ10に入るだろうなあ。
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