takaori

あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。のtakaoriのレビュー・感想・評価

3.4
2024年88本目
劇場33本目

遅ればせながらようやく鑑賞。ずいぶん息の長いロングラン上映である。劇場には自分を含めて10数人の観客がいて、年配の夫婦連れが多かったように感じた。
2023年は「新たな戦前になる」と言われただけあって、実に戦争映画の年であったと感じるラインナップに加わる一作だった。終戦間際の1945年6月にタイムスリップした女子高生が、戦争や特攻の虚しさ愚かさに直面して怒り、無力さに泣くというストーリーは実に直球で分かりやすい。80年前なのに言葉も文化もほぼ現代と同じというのはやや物足りず、言葉が通じないことによるミスコミュニケーションなどをもう少し演出に取り入れてから、それを乗り越えて交流が深まったあたりで出撃命令が…とすればもっとドラマチックになったと思うが、まあそれは大衆向けの映画なので良しとする。しかし、映画が一貫して「戦後の日本は平和な良い国になった」としているところはどうにもモヤモヤする。総理大臣が、それもよりにもよって広島出身の男が「戦争ができる普通の国にする」などと嘯いているこの現状のヤバさをもう少し危機感を持って捉えてはどうか? 「次の敗戦」がもう目の前に迫っているのではないか? という現実がすっぽり抜け落ちて、女子高生の百合の将来は前途洋々と言わんばかりのラストは納得できない。劇場ではすすり泣く声も聞かれたが、うーんこれではね…。
良かったのは、「まいんちゃん」こと福原遥が愛くるしさと凛々しさを兼ね備えた素敵な女優になっていたこと。彼女の魅力が画面いっぱいに溢れていただけでも、十分見る価値のある映画であった。
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