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ほつれるのchiのレビュー・感想・評価

ほつれる(2023年製作の映画)
3.9
トークイベント付き試写会にて鑑賞させていただきました。
人物たちの感情が読めないという感想を抱く人もいるかもしれないけれど、私は結構楽しめた。人物たちに共感はしないが、彼女たちの言動にはこの人がこうするのは納得感があると思え、言葉で説明するのが難しいが設定、演出、演技が全て絶妙だと感じた。
綿子たちは感情や行動を言葉で説明しない。説明台詞は一切なかったと思う。その代わり、台詞以外の演出で見せており、それがかなり上手いと思った。専業主婦という設定、夫婦の住むおしゃれな家。綿子と文則はお互いに自覚しているほど冷め切った関係で、一緒にいることで息苦しさすら抱くほどであるにも関わらず離婚していないわけだが、この余裕のある生活を捨てられないのだなということが、家と生活から見て取れる。また、文則が家事をしない人であることも、朝に机に残された食器を洗う綿子の姿で表現されている。指輪を探すシーンも、説明はせずに絵だけで見せ、さらにそこに綿子の感情をも私たちに想像させる。カフェで指輪を外すシーンをはじめ、どのシーンもわざとらしい大袈裟さがなく、さりげなく写しているのがとても好みだった。2人がプレゼントを渡し合うシーンは2人にもこんな瞬間があるのだなと、かつてはとても仲の良いカップルであったことを伺わせる。
序盤の木村が指輪をしていない方にと言って指輪を渡して左手で写真を撮るシーンも好きだった。上映後のトークイベントに登壇された漫画家の松本千秋さんが、この時に綿子がありがとうを言わなかったと話していて、私もそれ気づいていたので、理由を監督に聞きたいと思った。
とにかく、自分的に絶妙で好きなシーンが多い作品だった。台詞で説明されないからこそ、考えたり想像したりしたい人におすすめ。

SYOさん、松本千秋さんのトークイベント付き。ユーロライブにて。
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