映像も感情も、行間だけを徹底的に研ぎ澄ましたようなストイックさ。
若く裕福な夫婦の、文字通り感情が「ほつれる」瞬間に向けて、ひたすら静かにひたすらシャープにショットが積み上げられていく。
あらすじの要約がまったく意味をなさないタイプの映画だが、劇場の暗闇のなかで息を潜めてスクリーンと向き合ってはじめて真価がわかる作劇が徹底されている。
言葉で説明できない感情のあわいを演じることを要求された俳優陣の困難さたるや想像するに余りあるが、ひとり残らず素晴らしい。門脇麦のなんたる実在感。
濱口竜介（奇しくもヴェネツィアで銀獅子賞を獲得した次作がグランピングと石橋英子というキーワードで本作に繋がる）の次の世代が早くも躍動していることに、日本映画の希望を感じずにおれない。
