ダブル不倫中の主人公カップル。ある日、男の方が女の目の前で事故死して、取り残された女は急逝した男の幻影に引きずられるうち、彼との「秘密の関係」が徐々に周囲にバレ始め、果ては（家庭内別居中の）旦那にまで知られることとなり……。
アウトラインだけ眺めたら、とにかく（身勝手きわまりない）登場人物の誰にも感情移入できない話……なのだけど、不倫カップルを演じた門脇麦と染谷将太の絶妙な容貌と演技力のおかげで、最後の最後まで飽きずに観ることができた（ルッキズムに根ざした見方だが、これが単なる〝ブサい男女のもつれ〟だったら……そもそも成立しなよね？）
特筆すべきは、彼女の旦那役を演じた田村健太郎の絶妙なイヤらしさ。これまた「現実の男性」を思い描いたら、とてもではないが閉口してしまうような、嫌味で理屈っぽくて姑息な発言しかしない男なのだが、それも〝お芝居の中の出来事〟だと思えば、半笑いで観てられる。
また、冒頭の箱根のグランピングから、友人（黒木華）とのドライブ行楽まで、巧みにブルジョワ的な趣向や設定が「生活臭の希薄さ」を醸し出しているのも（おそらく意図的だろうが）反語的に素晴らしい。「お金も時間もあるけれど、気持ちが満たされないノ」ってか…？
なんか批判的なレビューに聞こえるかもしれないけど、一連の「愚か者たちの宴」を観測している側としては、その〝気まずさ〟や〝イヤらしさ〟が逆説的に楽しめて仕方がなかった。端役まで、気が利いていたし。
音楽の流れるシーンが少なかったのも、個人的には好感が持てた。
