たく

パラダイスの夕暮れのたくのレビュー・感想・評価

パラダイスの夕暮れ(1986年製作の映画)
3.7
しがない労働者のささやかな恋を描くアキ・カウリスマキ監督の「プロレタリアート3部作」の第1作目。登場人物たちが表情を一切変えないのがこの監督の特徴で、全編に流れる数々の歌が彼らの感情を代弁してた。カティ・オウティネンは「マッチ工場の少女」でも印象的な存在感を示してて、本作では気まぐれな女心を持つ役柄を自然に演じてた。

ゴミ収集の仕事をしてるニカンデルが、同僚から独立の誘いを受けるも、その同僚が突然死してしまう。そこへ新たなパートナーとなる男性がやってきて、ちょっと人が良すぎやしないかというくらい何かにつけてニカンデルの助けとなる。ニカンデルが親切にされたスーパーのレジ係のイロナに恋をしてビンゴ会場をデート場所に選ぶという大失敗をやらかしちゃうのは、「タクシードライバー」でトラヴィスが高嶺の花たるベッツィーをデートでポルノ映画に連れていっちゃうくだりを思い出す。

きまぐれなイロナがなんだかんだニカンデルに好意を持ってる感じが何とも良くて、彼女にデートをすっぽかされたニカンデルがポーカーフェイスでイロナを突き放すけど、内心では憔悴し切ってるのがお茶目だった。ここから吹っ切れたニカンデルがイロナ奪還に突き進むのかカッコ良くて、イロナの気まぐれな行動は実は彼を吹っ切れさせるための作戦だったようにも思えてくる。
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