ShojiIkura

人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をしたのShojiIkuraのレビュー・感想・評価

3.7
 長いタイトルは、たいてい小説やエッセイの原作だ。どうしても「元アイドル」と「おじさん」という言葉に目が行ってしまい、おじさんことささぽんよりちょい上年代(当時の年齢だから実際はほぼ同年代か)の僕としては、若い子とのラブロマンスを恥ずかしながら思い描いてしまうが、ささぽんのポジションはとても現実的だ。そして「元アイドル」という肩書が邪魔をして、さらなるキャリアアップが出来ない→人生を詰んでいる、と捉えているヒロイン、つまり視点を変えるだけで全く景色が変わるはずのアラサー女子に、理想的な寄り添い方をしている。それは「おかえり」と声をかけ、食事を用意して、お互いの予定を確認しあう(結構大事)という日々であり、決してこっちからは指摘しようとしない、話してきたら、基本「仕方ない」「大丈夫」「自分らしく」というポジティブな話をして、終わったらTVをつける、という生活だ。
 これは赤の他人だから出きるのか?父親が娘にするのは無理なのか…と自分に置き換えて落ち込んでしまうが、原作が実話であり、ささぽんが亜希子にかけた言葉の多くが実際に話したことと、パンフレットから知って、ささぽんの素晴らしさにうなってしまった。
 そして原作者曰く、映画での再現性も高いとのことで、そこは女性監督の制作という部分と、アクターたちの見事な技量と言えるだろう。
 ヒロインと同世代の女性はもちろん勇気をもらうのだろうが、ささぽん世代のおじさんたちも、アラサーのみならず女子たちに、君たちは輝ける、がんばれ、と応援したい気持ちになる作品だ。
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