ハル

人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をしたのハルのレビュー・感想・評価

3.6
お金に困窮した元アイドルの20代女性が見知らぬ、おじさんと同居する。
ここだけ切り取ると悍ましい空気すら漂うが、家賃3万円で立派な戸建てに居住可能、その上お風呂や各種家電も使い放題とくれば、即決間違いなし。
おじさんは一人でいるのが淋しいから誰かにいてほしい、困窮娘は生活の安定がほしいということで両者の利害もピッタリ。
ルールはたった一つ“互いに干渉しない事”

この不思議な同居生活を見ていると、“干渉をしない”ってとても大切に感じる。
友人が結婚したり、仕事がうまくいかなかったりで周囲を気にしてばかりの安希子にはこの距離感が必要だったんだろうね。
おじさん相手なら比較もしないし意地の張り合いも必要ないわけで、心が消耗しない。
突然の腹痛に襲われ生命の危機を感じたときも、目覚めたらおじさんがついてくれていて、人の優しさに触れたことで荒んだメンタルも回復。
ちなみに今作の“干渉”は過干渉的な意味合いなので、普通に会話もするし、窮屈な部分は一切なし。

親友でも家族でも、結局は自分ではない別の人。
ボクも大人になるに連れ、相手の全てを本質的に理解するのは不可能だと諦め、適度な距離感やバランスを保つ“気楽さ”が沁みてきたところ。
ノンストレスな距離感ってあるよね。
『相手のためを思って伝える言葉』は掘り下げると自分のために言っている事もあって、相手にとっては不要であったりお節介だったり…そうして、人間関係がギクシャクしていく経験もしてきた。
だからこそ“適度”が大事。

原作は未読だったけれど、現代的な作風がすんなり入ってくる、とても見やすい作品だった。
ただ、実話ベースとはいえリアリティはやや薄め。
そもそもおじさんが井浦新だからね…
あと気になったのは主人公の性格。
自分本意な考え方が苦手という方も一定数いるはず。
男性と女性で受け取り方が変わるタイプの作品に思えました。
ハル

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