NS

哀れなるものたちのNSのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.4
今年のベスト入りは確実。ランティモスで1番好きかもしれない。

ランティモスらしさは少し抑えられていたが、ブラックジョークで皮肉るスタイルは健在。映画祭ということもあってか場内では笑いが起きまくっており、最高の映画体験だった。

知能の低い無垢な女性が急速に成長することで自由意志を獲得し、彼女を搾取しようと目論む哀れな男性たちを置いてけぼりにする。そんなフェミニズムの視点を持ち合わせた成長譚であり冒険譚だが、これがとても素晴らしかった。加えてとてつもなく幻想的な世界観の御伽話でもあったので、視覚的にも大変満足度が高い。特に船外の独特な表現にはとても魅了された。

そしてなんといっても俳優陣の神がかった演技。エマ・ストーンの演技はキャリアベストで間違いないと思う。成長していくベラを見事に演じ、同時に今までみたことがないほど身体を張っていた。マーク・ラファロはかなりのハマり役で、初めて演技を好きに思えた。ハンナ・シグラはさすがの存在感であったし、ウィレム・デフォーは言わずもがな。

ところで、モノクロなのは冒頭だけだったが、あれはベラが純潔を失ったから世界がカラーになったのか、ただゴッドとの閉鎖的な生活がモノクロだということなのか上手く解釈できず。あと、前作にも増して多用されていた魚眼・広角レンズもよくわからない。これはランティモスっぽさで片付けていい気もする。

とはいえ、自身の持つ強烈な作家性はある程度維持しつつ、大衆向けのコメディ要素を加えたフェミニズム映画に仕上げたランティモスの手腕には舌を巻く。世界観、美術、脚本、演技、演出が高いレベルで融合している作品。

大傑作。
NS

NS