たむ

哀れなるものたちのたむのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.3
一日限定の先行公開。
ヴェネツィア国際映画祭金獅子賞受賞、アカデミー賞でも有力候補となっているブラック・サイエンスコメディです。
いつも凄いと思ってましたが、ヨルゴス・ランティモス監督の凄まじい才能をみせつけられる、トンデモナイ映画です。
最高傑作と言っても良いと私は思います。
題材や物語、キャラクターの神話に基づいた世界観と風刺が、これまでも魅力でしたが、それ以上のイマジネーションを本作では展開します。
ウェス・アンダーソン監督もびっくりするような美学に彩られた、オリジナリティな世界。
それが女性版のフランケンシュタインの怪物でもある主人公のベラの旅路、心理的な葛藤と成長を物語っていきます。
あいかわらずドギツイ描写も展開もあります。
そういう意味でも一つの集大成でもあり、古典からの皮肉な現代化、あるいは未来化。
不思議なカメラワークもあり、これは考察のしがいもある、合う人は何度も観たくなってしまう(合わない人は二度と観ないか、途中でも劇場から出ていきそう)作品です。
成熟した女性の肉体に赤子の脳を入れる事で、世界はこれほど恐ろしくも、楽しくも、希望も、絶望も描くことができる。
圧倒されるほどのイマジネーションと根源的な葛藤。
ランティモス監督はギリシア出身ということもあり、監督作品にはギリシア神話の皮肉な解釈が施されます。
本作もまたなんとも歪な神と人間の映画が完成しましたね。
たむ

たむ