白波

哀れなるものたちの白波のレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.3
劇場鑑賞
ヨルゴス・ランティモスの新作。
「女王陛下のお気に入り」のタッグで、これが予想以上の強烈な作品でした。
あまりにも悲しい奇妙な生い立ちの少女、その成長を描いたロードムービー。というより寓話の方が正しいでしょうか。
まずそのアートワークが素晴らしい。
御伽話のような街並みや建物に船、ビビッドな空にファッション。
モノクロや魚眼を多用したカメラなど、本当に目まぐるしいです。
あと凄いのが劇伴ですね。音楽ともSEともいえない音はとても作品に彩りをつけていましたし、それが傷のように残るんです。
その視点や景色は全て子供の「世界を知りたい」といった好奇心だけで描かれていて、それが何処か愛おしいかったです。
夢のような美しい世界から、バベルの塔から見下ろす地獄。
最初から危なっかしい冒険でしたが、貧富や争い色欲など世の中の闇も学び、どんどんと大人になってその目に映る景色も変化していく。
エマストーンは野生味のある芝居で、無垢な部分が良く出ていました。
だからか、いやらしさがないんですね。正に熱烈ジャンプです。
それとゴッド役のウィレム・デフォー、エマストーンに劣らないインパクトを残していました。
フランケンシュタインの様な風貌と、狂気と裏腹な優しい父親像。
育て・見守り・見送り・看取られる。最高の演技でした。
それと最後にもうひとエピソード入れてきたのには驚きましたね。
そしてエンドロールがまた素晴らしかった。
テキストとビジュアルの組み合わせが本当美しかったです。
最初から最後まで耽美で生と性とアーティステイックな魅力に溢れた作品でした。本当に見事ですよ。
白波

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