多湖

哀れなるものたちの多湖のレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
5.0
■ 個人的2024年のベストがもうこれかもしれない、というほどの感動があった。本当によかった、この作品を観ることができてうれしかった。観てからしばらく、ずっとずっとこの映画のことを考えていた! こうした、考えることに夢中になってしまう、ことが叶った映画、個人的には『CLOSE/クロース』以来だった。

■ 人間讃歌だ、と思った。たとえば、醜さ、愚かさ、獣性、とかが人間にはあるけれど、そこをも包含して描き出す。美化なんかしない。そのままがある。でも、逆にそうした哀れさをも包含していることがそのまま愛であるように感じた。醜く、愚かで、獣性すらある「哀れなるものたち」、この映画を最後まで観たとき、「あ、この哀れって…もしかして「可愛らしい」の方の意味なのかも…」と、私は感じた。
書いていてふと気づいたけど、思い返すと解釈的? な描写があまりなかったかもしれない。誰かの目に触れた「哀れさ」に対し、それって醜いね、愚かだね、汚いね、みたいな評価がされない。もちろんゼロではないが、ほんとうにポツンとそれをこぼす外野、くらいの小ささだったと思う。
否定も批判もしない。それも人間の一側面である、ように映されていたと感じる。だから嬉しかった、だから、「哀れなるものたち」への人間讃歌だと感じた。

■ エマ・ストーンが可愛くて、綺麗で、凄かった。何かのインタビュー記事? で、演じることが難しかったという話を読んだ気がする。これは…、たしかによく演技ができたな…みたいな驚きがある。
赤ん坊の脳と成人女性の肉体で生きるベラ・バクスター。歩き方も赤ん坊のようにたどたどしく、言葉だって単語だったりシンプルな感情表現、ゴッドの名前を呼ぶくらいのもの。そして幼児であるゆえの無垢と野蛮。それを演じきるエマ・ストーンに対し、畏敬すら抱く。本当に凄かった!!

■ 冒険先のリスボンで、まだまだ幼いベラがゲロを吐くシーンと、おそらく目の前の芸術表現に感動を覚えているのだろうな…と読み取れるシーンがあって、そこが気に入っている。
他にもベラの感情機能? がまだ幼いゆえに起こる、ダンカンとのミスコミュニケーションみたいなものが、まるでコントのようだった。あまりにも面白すぎた。何度も笑った記憶がある…。

■ 衣装、美術、音楽…。そうした、舞台をつくりあげるための手法も凄かった。特に音楽。かなり特徴的な劇伴だった…。なんかもう、何から何まで凄かったな…………と感じる。もう2回は観たい。本当に最高だった、我が人生におけるお気に入りの映画になりました。
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